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「ほら」
その誘いの言葉と大きな分厚い掌の誘惑に逆らえるはずもなく、だが素直に従うのも気にくわない為、高いぞと目を細めると一瞬驚いた後、破顔一笑。
「好きなものを教えてくれ」
俺で買えるものなら買うし無理なら一緒に買おうと笑うリアムに溜息一つで頷いた慶一朗は、アナには壁の花になっていると告白したその舌の根が乾かないうちに部屋の中央に向かうと、珍しいと言いたげに見つめてくるスタッフに肩を竦めてリアムの誘いだから断れないなぁと笑い、踊って欲しいと誘ってくる子供に片目を閉じる。
「最初に誘って来たのはドクター・フーバーだから、彼と踊った後に君と踊ろうかな」
「男同士で踊るの?」
「そうだけど?」
踊って楽しい相手は何も異性だけとは限らない、同性でも楽しい相手はいるんだと笑った慶一朗の言葉にリアムが何か言いたげに目を見開くが、特に言葉に出さずにもう一度慶一朗に向けて手を差し出す。
「ドクター・ユズ、踊ってくれませんか?」
「喜んで」
その言葉に他のスタッフや子供達がパートナーにと決めた人に声をかけ、皆がダンスの相手と向かい合う。
講師の掛け声で音楽が流れ出し、それに合わせる様にそれぞれが無理をしない動きで踊りだし、慶一朗もリアムと一緒に踊り出す。
男同士と不思議がられた二人だが、周囲はまた仲良しが一緒に何かをしていると笑い、二人も楽しそうに曲に合わせて踊っている為、二人を中心に周囲に笑顔の輪が広がって行く。
「……ケイ、楽しいか?」
「そうだなぁ……」
誰かさんが思うより楽しんでいると笑いながらリアムの耳元に口を寄せた慶一朗は、背中をポンと叩いた後、曲が変わったからパートナーを変えなければならないが、本当はしたくない、もうお前の手を離すつもりはないとも囁くと、リアムのヘイゼルの双眸が見開かれ、それを見た慶一朗が満足そうに吐息を零した後さっき踊ってと声をかけた少女に向き直る。
「ケイ」
「――お楽しみは自宅でな」
この続きは自宅で二人きりになってからと片目を閉じた慶一朗にリアムもニヤリと笑みを浮かべて返事をし、他の子供が踊ってと誘って来た為、その子供に向き直るのだった。
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