Dance with me. - every day, every night –

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 自宅と左右反対の間取りのリビングは不思議なほど居心地が良くて、そこにある持ち主の体に合わせた様な頑丈なソファでお気に入りのバスローブだけを着、観葉植物の葉が大きく描かれているクッションを抱え込んでいた慶一朗は、シャワーを浴びているリアムが戻ってくる間、お気に入りのドラマを見ながらビールを飲んでいた。  結局一曲だけしかリアムとは踊れなかったが、その一曲分で今まで生きてきた中で踊った時間を凌駕する気持ち良さを覚え、好きな人と踊ることの気持ち良さに初めて気付いたのだ。  今まで仕事関係やプライベートなどで踊ることはあったが、心から好きになった人と踊ったことなどなく、それが今日のリアムとのあのダンスだと気付くと、不意にのたうち回りたくなる様な羞恥を覚え、自宅なら青い電話ボックス型のぬいぐるみだが、リアムの自宅だから大きめのクッションを抱え込んでソファに寝転ぶ。  洋の東西を問わず、好きな人を誘ってダンスをする歌や映画などがあるが、その時の主人公達の気持ちがようやく少しだけ理解できた慶一朗だったが、何を暴れているんだと苦笑まじりに問われてクッションに押し付けていた顔を上げれば、風呂上がりのリアムが不思議そうな顔で見下ろしていて。  どうしてここにリアムがいるのに俺はクッションを抱えているんだと、この世の不条理が全てその言葉に集約している様な顔でそれを睨んだ慶一朗は、どうしたと問いながらソファの前に別のクッションを置いて座り込んだリアムの向こう側へと不条理を投げ飛ばすと、完全に解消しようと両腕を伸ばす。  「ケイ?」  「・・・暑苦しい」  シャワーを浴びたばかりで体温も上がっているリアムを抱きしめた慶一朗だったが、元々慶一朗と違って基礎体温の高いリアムの体が熱いのは仕方のないことだった。  暑苦しいと文句を言うのならば離れればどうだとリアムに笑われ、バスローブの背中を撫でられた慶一朗は、暑苦しいお前が悪い、俺は離れたくないとハニーブロンドの髪を抱え込む様に腕を回して吐き捨てると、嬉しい告白だなぁとリアムが嬉しそうに笑う。
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