Dance with me. - every day, every night –

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 ヘイゼルの双眸に見下ろされ、咄嗟に覚えた羞恥から顔を背けるが、やんわりと顎を掴まれて正対する様に戻されてしまうと今日はそれ以上逆らう気持ちになれず、ならばと腕を伸ばして広い背中ではなく頭を抱え込む様にすれば、顔が見たいのにと囁かれてぞくりと背筋が震える。  「・・・俺は見られたくない」  俺の顔なんか見なくても良いだろうと、恋人に伝える言葉ではないだろうと思いつつも告げれば、宥める様なキスがこめかみや髪に落とされ、ケイ、顔を見せてくれと強請られてその言葉にも逆らえなくなってしまう。  何だか今日は午後病院で踊って以来、リアムの真っ直ぐな視線を受け止めるのが難しく感じていたのだ。  なのに、もう一度シャワーで汗を流さなければならなくなるほど二人で踊っていたのだが、その時にゆっくりと密着しながら踊れる曲の時など特に真正面から見つめることも見つめられる事も出来ない程だった。  付き合い出して半年ほど経過するが、目を見られなくなるほどリアムに意識が奪われた事が今まで無く、自分は一体どうしてしまったのかと密かに慌てていたのだ。  そんないつもとは違う気持ちが胸に溢れているのに顔を見たいなどと囁かれてしまえば逆らいたい気持ちと従いたい気持ちが綯い交ぜになり、思わず腕で目元を覆い隠した慶一朗は、これが限界だと言い放ち、小さな笑みの後にうんと頷き無理強いをしてこない恋人に気付く。  こちらが嫌だと意思表示をすれば可能な限りそれを優先し、自分の気持ちを抑え込める、恋人として最高の男の様に感じ、本当にどうしてそんな男が自分なんかを好きになるんだと、小さくなっても決して消えることのないその思いが胸に溢れるが、付き合うことを決めた時に宿った小さな明かりがその思いをそっと影の中に押し戻す様にふわりと大きくなり、熱膨張をした思いに慶一朗が苦しそうに息を一つ吐く。  「・・・リアム」  「ん?」  好きだとの告白はリアムの耳には届かずに慶一朗の口の中で篭ってしまうが、少しだけでも伝わって欲しいとの思いからリアムに向けて小さく両手を広げ、手の中に収まってくれる世界一愛嬌のある頬を両手で挟み、期待に薄く開く唇に告白できなかった思いを混ぜ込んだキスをするのだった。
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