1st Impression.

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「……お疲れー、ケイ。今から遊びに行かないか?」  執刀の見事さにキラキラと目を輝かせる後輩に無言で肩を竦めた後、今日は朝一番の手術が終われば休暇を取る予定だった為に今日一日の仕事を終えた慶一朗は、同じく仕事を終えたらしい同僚が遊びに行かないかと誘ってきたことに気付きロッカールームの前で足を止める。 「今日は予定があるから無理だな」  せっかく誘ってくれたけど次回にしてくれないかと肩を竦めると同僚の顔に一瞬だけ不満そうな色が浮かぶが、次は必ず遊びに行くぞと念押しされてしまい、勿論と誰からも信頼される笑顔で頷く。 「またな、ケイ!」 「ああ、また誘ってくれ」  誘いを断られても次への期待を持たせるような返事をし、ひらひらと同僚に手を振ってロッカールームに入った彼は自身のロッカーを開けて溜息を一つ零すと、ロッカーのドアについている小さな鏡に一瞬だけ無表情な顔を映すが、その己と視線を合わせて疲れたと溜息をもう一つ。  職場で着ているブルーグリーンのシャツから私服に着替えを済ませ、ロッカーを閉めて車のキーを指先に引っ掛けてくるりと回転させると、今日の午後と明日の休暇はどうする、行きつけの模型店に行くか、その店で知り合った同じ趣味を持つ人から教えられた店に行ってみようかと鼻歌交じりに廊下に出る。
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