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1.パッとしないチラシ
拍手が鳴り止まず、再び幕が上がる。
出演者の名前は上から下まで、この劇場に観に来た者が誰一人知らない俳優はいないだろうという豪華な顔ぶれ。
脚本はもちろん、書けば当たるというあの有名脚本家。
俳優一人一人の個性に合わせて書いているのだろうか。隅から隅まで面白い。
カーテンコールの幕が下り、向井は座席から立つ。
購入したパンフレットはバックに収まるサイズで、これは本棚からあぶれなくて済むなと一人で満足する。
このまま帰って、風呂入って、もらったチラシを眺めて、寝よう。その前に、あの人にメッセージでも送ってみようか。
チケットが取れたと言ったら、観た感想、教えてと言っていたし。
いやいやと頭を振る。知ってしまうといけない。今までは、大体一人で芝居を観てたんだ。これからもそれでいいじゃないか。
帰ったらあいつは、どうだった、とも聞かないし。俺は、面白かった、とも言わないけれど。
それが一番平穏ではあるのだ。
隣には誰も座らなくていい。
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