ストーキングクラブ

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 僕は決心した。準備は十分にしてある。店に設置されたカメラの位置、カメラを隠し持つ客や店員。店の近くに止めた車の中で、ライブ動画を確認しながら、誰が組織側の人間であるかを何日も掛けて突き止めた。  彼女がカメラの死角に入ったのをライブ動画で確認すると、電話を掛け、そのまま裏口から出て来て欲しいと伝える。通りに停めた僕の車に彼女が乗り込むと同時に、車を急発進させた。運転しながら、彼女が話していたストーカーが誰なのかを知っていると伝えた。  車を都下に向けて走らせながら、自分の成功までの経緯、組織の存在、彼女が観察対象として選ばれていることを洗いざらい話していく。  訝しんでいる彼女にスマホを差し出し、アプリの操作方法を説明する。あの男がカメラを設置していた日時を伝え、動画を観るよう促した。  しばらく黙って画面と向き合っていた彼女は、やっと私の話を信じる気になったようだ。ショックを受けている様子に心が痛む。  車が向かっているのは、会社名義の別荘だ。簡単に組織に見つかることもない筈だ。  別荘に到着し、しばらくここで過ごしてみたらどうかと彼女に聞いてみる。僕には十分な金があるし、組織を彼女から遠ざけることぐらい、難なく出来る。外国にでも一緒に逃げてしまえば、組織も追うのを諦めるだろう。  だが、その返事を聞くよりも早く、玄関の扉が開き、数人の男がなだれ込んできた。  彼らは、僕には目もくれず、彼女だけを連れ去った。可能な限りの抵抗をしてみたが、腕力で敵う相手ではなかった。あっという間にねじ伏せられ、手足を縛られて床に放置された。
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