お客様

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「お願いします」 カレーもできたらしい。 さすが千佳ちゃん。 仕事が早い。 千佳ちゃん…君島 千佳(キミジマチカ)ちゃん。 大学に入ってからここでアルバイトをはじめて。 まだ2年くらいだけれど、とても仕事ができる。 「あ、私が持っていきましょうか」 中で片付けをしていた私に、気を利かせてくれるけど。 「…大丈夫、持っていきます」 千佳ちゃんには、まだ仕事があるからね。 それだけだよ、それだけ。 疚しい気持ちはない。 「カレー、お待たせしました」 もう一度しっかりと見たけれど。 やっぱり橘だ。 「…ありがとうございます」 でも、橘は無反応。 私の事なんて忘れてしまっているのかもしれないね、やっぱり。 そこでふと思い出した。 当時流行っていたサイン帳。 色んなことに答えてもらう用紙。 あれ、橘にも書いてもらったっけ。 そして、好きな食べ物。 カレーだったな、そういえば。
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