Mさん

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Mさん

「どこだ、ここ……」  昨夜、布団に入ったところまでは覚えている。  ただ、誰が見ても明らかに布団など此処には無かった。辺りは一面の草原だ。何度目を凝らそうが、地平線の先まで続いているであろう、青々とした草原。  初めは動揺して身動きが取れなかったが、とりあえず歩いてみようと思い立つ。 「うん。こんな天気のいいなか、綺麗な草原を散歩しない道理はないよな!」  今の自分の状況はこの際考えないことにした。意気揚々と草原を歩く。  数十分歩いた頃だろうか。それはある種希望的であり、だからこそ新たな試練のようにも見えたのだ。 「やっぱりスマホがないと暇だなぁ。……おっ? あれは!!」  目に写るのは地平線の近くにある、背の高い木々の数々。 「そう言えば、腹減ったなぁ。山だったら果物もあるかもしれないし!」  嬉々としてその広大な森に向かって歩く。  十数分経った頃、やっと森の入り口にたどり着いた。近くから見る木々はやはり背が高く、平均と比べても高いはずの俺の身長の三倍もあり壮観だ。  何が生えているだろうかと、ワクワクしながら鬱蒼とした森の中へ足を踏み出す。 「んー? 何も生えてねぇじゃん」  辺りを見渡せど、暗い緑が視界一杯に写るだけだ。  否、その視界には、一部に別色が写り込んだ。 「青……いや、赤? それも違う。なんだあの色は?」  人生で初めて見る色だった。  なんとも形容しがたい、複数の色が混じり合って、それでいて共存しているような……。 「っ?!」  ごぽり、と音がした。  それはその不可思議な物質から発せられ、そして…… 「ごふっ……」  視界が赤く染まる。そして暗くなっていき、そしてそこに来てようやく思い出す。 ───森には、そこを住処とする生物がいる───  次ニ目が覚めタ時、自分のかラだハ青でもあカでもないようナ…… ──────「と、いうことが昔にあったそうですよ。皆さんもあの森の主には気をつけましょうね」 「「「はーい!」」」  耳の尖った女性と子供たちの遥か後ろ、鬱蒼と生え盛った森の中で、ごぽりと二つ、音が鳴った。
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