U君

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U君

異世界転移は男のロマンだと思う。 退屈な日常に非現実を求めるのは世の男子高校生の常であり、きっと誰もがテロリストの弾丸をマトリックスの応用で回避し、華麗に五体を羽交い締めしてすんと冴えた顔で「やれやれ」の一言を言うくらいは誰もが想像したことがあるだろう。 かくいう私もその一人であり、此度の道徳の授業でもブレザーの中に隠されているスマホで無双系チート異世界転移小説を黙読中である。道徳の時間な訳なので今回はハーレム要素は入ってませんよ?えぇ。 おやどうしたんだい先生僕の制服の中なんてのぞいちゃって。 先生がそういう趣味なのは否定はしませんが、それは僕が卒業してからで・す・よ❤️ 「没収あと放課後指導室」 あ、あ、はい…… そんな訳で僕らから娯楽を搾取する先生という立場から反する恐ろしい現代社会の闇を垣間見たことで、ちゃんとモラルを学んでいこうと思う。 というわけでこっそり私的なIPADを取り出して、しょうせつかになろ…… 「校長室な」 ッススススーー。華麗な手捌きですね。もう尊敬しますよ。ていうか 先生僕のことばっか見てません?エコひいきすると嫌われますよあっはっはっグオぇ。殴るのはダメでしょ殴っちゃぁ! あぁいったいなぁ、そうやって三、四本は千切れたでろう血管を慰めつつ、ゆっくりと顔を上げようとした、その時。 自分の机の下に光り輝く魔法陣が。……うそん。あぁこれ、異世界に転移しちゃう系のアレですよね、知ってます。でもなーこの大きさ的に一人だけっぽいんだよなー……クラス転移がマイブームなんだけどなぁ…… あぁ先生良いところに!一緒にハネムーン行きません?命の保証はできませんが… あぁ殴らない殴らない…幾ら優しい僕でもそろそろ怒こっちゃいますよ。 「何それ」 あぁこれは僕らの新婚旅行の片道切符でしてね。これでスイスイ〜て女神様か王様の前に叩き出されるんですよ。ええ。 ちょっと待って蹴るのは反則反則。あ、意外と良いかも。あぁやっぱ痛い! 無理無理ちょっと真顔で蹴り続けないで! ああ魔法陣めっちゃ輝いてる。さぁいきますよ先生! あぁ帰らないで行かないで先生!私をおいてあの男と付き合うっていうの! あぁ光ってる光ってる そこには僕と、先生の右足が。 あぁ先生小さくなりましたね……ちょっとそれだけでどうやって蹴ってるんですかえぇ? あ、おめでとうございます。レベルアップしたみたいですよ。 ちょ、攻撃力上がってるから、そんな蹴らないで!
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