予兆

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予兆

軍勢 未だ遭遇した事は無い。  冷く残忍で、その群(むれ)が放つ禍々しい臭気は、一群が通り過ぎた後の大地を蹂躙(じゅうりん)し、そこにあった全ての生あるものを薙(な)ぎ焦土とした。  兵士達の殆どに自我は無く 「薙げぃ!」 という唯一の指示のみを拠所とし、眼前にある生を、息絶えるまで、粉微塵になるまで薙ぎ続ける。  全ての兵が異形の者として生まれ、ある者は、身体中に刃(やいば)を帯び、ある者は、触れた物全てを毒によって侵し、ある者は、膨大な量の雷(いかずち)を宿し対する相手にけし掛ける。  其々が其々、生ある者を滅するという絶対的な意思に引き摺られ、混ざり合い、ドロドロとした暴力の渦として突き進んでいく。 いつしか、この逃げるより他対処法の見当たらぬ禍々しさの塊は、 【大厄災】 と呼ばれ、全ての生ある者の奥底へ深々と刻み込まれて行った。
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