穴太衆/誘い

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穴太衆/誘い

佐々木の家は、村から一刻半、社から一刻の場所にある、村人の一部しか知らない渓谷の裂け目を入り口とし、岩盤の窪や天然の地形を利用し、そこへ組み込まれる様に作られた建造物が、渓谷を跨ぐ空中回廊で繋がっていて、全体が小宮殿と言えるほどの規模がありました。 「佐々木様、お持ちしましたー」 おおよそ毎日、村の者が代わる代わるに供物とし、食料や雑貨の類を届けてくれる。 「今日は吾作さんですか、何時も有難う存じます。帰りの道中もどうかお気を付けなさって下さいませ」 渓谷の入口から一番近くの荷受け場で、荷を受けた母のサクヤが#和__にこや__#かに礼を言うと、袖口で汗を拭いながら、恥ずかし気に尻込みし、吾作はそそくさと帰って行く。 冠婚葬祭、当主のハルヒは神主として村人と関わる機会も多いのですが、その他の者は、母のサクヤのこの挨拶以外他者と関わる事はなく、ある一定の年齢まで、小宮殿の中で家族としか過ごさぬ日常を送る。 佐々木の家には、そうせねばならぬ役目があり、理由があり、その役目の為に、小宮殿も供物も全てが惜しみなく捧げられていました。 当主ハルヒが長男ハルヒであった頃、最初の精通は、慣わしに則り、家族皆が見守る中、その時の母のサクヤによって(いざな)われ、成し得たのち、長女サクヤに担当が代わり、睾丸の根本を縛り上げ、同じ様に行われた。 母サクヤに誘われた時の様に、快楽の波が訪れて、射精に至る感覚はあるが、紐で精管が圧迫されている為精子が供給されず、いわば空撃ちの状態となる。 一方サクヤは、年功の序列に関わらず、初潮を迎えた者から順に、父のハルヒと初めてを迎え、以後サクヤが快楽を得るようになるまでを父のハルヒが担い、サクヤが快楽を得るようになって後、交わりを持つ事はない。 次のサクヤが初潮を迎えれば又、父のハルヒが誘い、快楽の所在を確認し、既に快楽を知るサクヤには長男が付き、手と口で快事を介添する。 この際の、長男の役目の手解きは、母のサクヤが済ませており、どうすれば良いかを心得ていて、父と交わるサクヤを見ながら、快楽の媒介として、長男の手技と口技による、快楽と同量の不満足を蓄積させてゆく。 度毎に、父のハルヒにより形作られてゆくサクヤの快楽に比して、長男の介添は激しさを潜め、最終的に無くなる。 長男の介添無く、快楽の記憶の残り香だけで、男性を迎え入れる準備が整う体になれば、佐々木の家に与えられたお役目が全う出来ると認められ、漸くサクヤはお役目に着くこととなる。
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