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・高齢化社会の昼のニュース
テレビアナウンサーがすました顔で画面に映り、短いニュースを伝えている。
「今日、T市街の公園で高齢男性が二人、殴り合っているという通報がありました。
警察官が駆けつけ事情を聞いたところ、
二人の男性は、毎日一緒に散歩に出かけていましたが、
散歩について『家を出たところからが散歩』か『公園についてからが散歩』かで口論になり、つい殴ってしまった言うことです。
警察では、二人とも反省しているので厳重に注意して帰宅させました。
この男性二人が、散歩がどこから始まるかで喧嘩になったのは、これが3度目だと言うことです。
・天国という名
青い空、ぽっかりと浮かぶ白い雲。
足下もふわふわとした雲のよう。
限りなく透明な泉。ほとりに生える緑の樹。
天国へ導かれた人々は、そんな世界で永遠に暮らす。
「だがよ、酒も女もなければ博打もだめ。
あれもだめこれもだめ。あれも無い、これも無い」
「神様が、『こう生きろ』って言う、神様の押しつけがましい幸せの世界だからな」
二人の男が、横たわる木に腰掛けて話していた。
「天国って言うのは、幸せを感じる世界かと思って、必死に天国へ来ることを願って生きていたんだがな」
「いざ来てみると、こうもすることがないとはな」
「地獄ってどんなところ何だろうな?」
「ああ。俺も最近、よくそれを考えるんだ」
「地獄へ行きたいとは思わないが、せめて見せてくれたら面白いかもな」
「それはそうだな」
「いやぁ、退屈だ」
「退屈も地獄の一つに加えるべきだな」
「それで、もう一つ思ったんだが」
「なんだ?」
「眠っているときに夢に見るだけなら、何をしたっていいわけだろ?」
「そりゃそうかもな。夢を見ることまで神様もとがめないだろう」
「ここに来てから、眠くならないから全然眠ってないから、眠ってみようかと思うんだ」
「俺も眠ってみる」
常に光に包まれ、暮れない一日が暮れていく。
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