小話2話

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・高齢化社会の昼のニュース テレビアナウンサーがすました顔で画面に映り、短いニュースを伝えている。 「今日、T市街の公園で高齢男性が二人、殴り合っているという通報がありました。 警察官が駆けつけ事情を聞いたところ、 二人の男性は、毎日一緒に散歩に出かけていましたが、 散歩について『家を出たところからが散歩』か『公園についてからが散歩』かで口論になり、つい殴ってしまった言うことです。 警察では、二人とも反省しているので厳重に注意して帰宅させました。 この男性二人が、散歩がどこから始まるかで喧嘩になったのは、これが3度目だと言うことです。 ・天国という名 青い空、ぽっかりと浮かぶ白い雲。 足下もふわふわとした雲のよう。 限りなく透明な泉。ほとりに生える緑の樹。 天国へ導かれた人々は、そんな世界で永遠に暮らす。 「だがよ、酒も女もなければ博打もだめ。 あれもだめこれもだめ。あれも無い、これも無い」 「神様が、『こう生きろ』って言う、神様の押しつけがましい幸せの世界だからな」 二人の男が、横たわる木に腰掛けて話していた。 「天国って言うのは、幸せを感じる世界かと思って、必死に天国へ来ることを願って生きていたんだがな」 「いざ来てみると、こうもすることがないとはな」 「地獄ってどんなところ何だろうな?」 「ああ。俺も最近、よくそれを考えるんだ」 「地獄へ行きたいとは思わないが、せめて見せてくれたら面白いかもな」 「それはそうだな」 「いやぁ、退屈だ」 「退屈も地獄の一つに加えるべきだな」 「それで、もう一つ思ったんだが」 「なんだ?」 「眠っているときに夢に見るだけなら、何をしたっていいわけだろ?」 「そりゃそうかもな。夢を見ることまで神様もとがめないだろう」 「ここに来てから、眠くならないから全然眠ってないから、眠ってみようかと思うんだ」 「俺も眠ってみる」 常に光に包まれ、暮れない一日が暮れていく。
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