38人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
私たちは、それほど広くないリビングに通され、テーブルの上にはお茶とコーヒーゼリーが用意された。
何ともアンバランスな組み合わせに、これから何が起こるのか、不安でたまらなくなった。
「圭介、奥の部屋に小さな金庫があるんだけど、取ってきてくれる?」
依子は圭介さんに用事を言い付け、私と二人きりにさせた。
「私たちって、コーヒーゼリーみたいよね。ゼリーとミルク、どっちがあなたなのかしら」
自分で出したコーヒーゼリーに依子はミルクをかけながら、私の方へは向かずに話しかける。
「そうねえ、私と圭介は黒いゼリーで、きっと朋恵さんは白いミルクね」
依子はそこにあったスプーンを、まだ掴み方を知らない子どものようにグーの形にして持ち、そのままコーヒーゼリーに突き刺した。
「ほら、小さな隙間を見つけて、その隙間が入ったところから、真っ白なミルクが躊躇うことなくじわじわと潜り込んでいくわ。一度注いでしまったら、もうどんなに追い出そうとしても、より深く、より奥へと侵入していくのよね」
依子は突き立てたスプーンを勢いよく撹拌し、無表情なままゼリーにかぶりついた。
「私、甘いものは苦手なのよ。だからね、シロップの入った甘いミルクは、大嫌いなの」
小さな声で話す依子の言葉は、鋭い刃で私の目を貫き、脳裏をえぐり、私の意識を乱暴に引き裂いた。
最初のコメントを投稿しよう!