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裏切り
これは、略奪愛っていうのかもしれない。
今の私の姿を見た人は、どんな風に見えるだろう。
大の大人が、夜の街を大きな声をあげて泣きながら歩いているなんて、どれだけ滑稽に写るだろうか。
テールランプの赤い光がいくつも私の横を通り過ぎ、夜の街へと消えてゆく。街の雑踏も少しずつ小さくなって、夜の闇に染まり、うっすらとざわめくような様子で街灯がチカチカと揺れている。
頬を伝う涙はとどまることを知らない。ぬぐってもぬぐっても涙が溢れて覆い被さり、私の瞳には眩しすぎるほどネオンの光が痛い。
私の横を誰も気付くことなく足早に去っていく。
本当に私の存在に気付かないのだろうか。
――だったらいっそ、このまま溶けて消えてしまいたい――
そんな私を見兼ねたのか、声をかけてきた一人の男の人がいた。
――こんなおかしな女に声をかける人なんて、きっとどうかしてるんだわ――
だけど、気付いた時には、その人の腕の中にいて、私は深く胸の中に顔を埋めていた。
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