第1章 騎士たち集結 編 第1話 破壊された街 

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第1章 騎士たち集結 編 第1話 破壊された街 

  ――――「…何が起こったの?? レオ!! しっかりして!!」 年齢は5歳くらいだろうか、ポニーテールを した銀髪の少女がレオと呼ばれた少女と 同い年くらいの少年の身体を揺らした。 少女はおもいっきり、レオの身体を 揺らしたり頬を叩いてみたりするが、 全く反応はない。レオは既に命を落として いた。でも、少女はまだ生きていると思って 必至で声をかけていた。  その時だった。人間のような姿をした 化け物が少女を狙った。少女は咄嗟に 目を閉じた。すると、大柄な男が少女を 抱き上げ、瞬時に人間のような姿をした 化け物を倒した。 「誰…?」 少女は涙目で答えると、大柄な男は優しく、 でも力強い言葉で言った。 「こんな思いしたくなれば、強くなれ。 強くならなければ、この世界では 生きられない」――――  「…っ!?」 ショートヘアーの銀髪の女性は目を 覚ました。 (夢か…) この女性の名はシア・コールドという。 シアは、変な夢を見て冷や汗をかいた。 まだ、シアが5歳の時に起こったことが 夢に出てきたときには、必ず嫌な予感がする。 (…何も起きなければいいけど…) シアの心はモヤモヤしていて、あまりいい 気分ではなかった。こういう時の嫌な予感は 当たりやすい。シアは気分転換をしようと シャワーを浴びた。  シャワーの音だけが響き、不気味な感じもする。 シアはシャワーを浴びても、嫌な予感だけしか しなくて、のんびりとシャワーを浴びることも せずに、サッとシャワーから出てきた。  すぐに着替えると、外に出て 細剣(レイピア)を構え、素振りを する。嫌な予感がするときには、 素振りをすることが一番落ち着くのだ。  2時間くらい素振りをしていた時、街の人が 声をかけてきた。 「シアちゃん、朝からトレーニングかい?」 「あぁ、なんだか落ち着かなくて…」 シアはフーッと長く息を吐いてから答えた。  この街はシアがいつもお世話になっている街で 街の人は家族のように迎えてくれる。シアにとって、 両親の記憶はないし、故郷と呼べる場所もない。 ただ、この街だけはシアの居場所だった。 5歳の時に名前もわからないあの大柄の男が この街に連れてきて、この街で育てられたのだ。 そして、この街で剣術や格闘術も学んだ。大柄の 男の師匠に強くしてもらった。  今は大柄の男も師匠もいない。師匠は病気で 亡くなったが、大柄の男は行方がわからない。 「立派になったね、女騎士になるなんて」 街の人がにっこり笑って言った。 「そうかな…」 シアは、苦笑いして言った。シア自身は 強くなったとは思っていないし、女騎士に なっても、大切な人すら守れない自分に 情けなく思うことのほうが多い。どれだけ 強くなっても自分には守れないのだろうか、 いつもそんなことを考えながら、日々過ごしている。 考えすぎなのかもしれないが、シアの心は 意外にも繊細なのだ。  数時間後、何も起こらなければいいと思って いたが、嫌な予感が的中してしまう。  穏やかだった街が一気に炎に包まれた。 「キャー!!」 「助けてー!!!」 叫び声が街中に響いた。  シアは細剣を持って辺りを見回す。すると、 爆発音がして、更に炎は燃え上がった。 「火事だー!!!!!」 街中の人たちがパニックになって大慌てで 逃げようと必至だ。  シアは何かの気配を感じてゆっくりと 細剣を構えた。そして、気配のした方向へ 目を向けた。斧がシアをめがけて飛んで くる。 「…誰だ!?」 シアは斧を細剣で払いのけた。そこに 現れたのは化け物だ。人間のような姿だが、 獣のようなものにも見える。シアは舌打ちを して、細剣で一気に化け物の胴体を斬る。 化け物は真っ二つに割れて動けなくなった。 何故、こんな化け物が襲ってくるのか、 理由はよくわからないが、化け物を作って いるのは人間だということは明らかだ。  シアは周りを警戒しながら、街の人達を 逃がすために誘導する。 「大切な街を壊される気持ちはどうだ?」 シアの背後で声がする。男の声だ。 「お前、誰だ?」 シアは男を睨み付けて言った。 「あぁ、初対面だったか、シアちゃん」 男はシアをじっと舐めまわすように見てニヤリと 笑った。 「私はお前を知らない。何故、私の名前を知っている?」 シアは細剣を男に振り下ろしながら言った。男は 細剣を刀で受け止めながら、不気味な笑みを浮かべた。 「俺はグール。シアちゃんのことはよく知ってるよ」 男、グールは剣を振り下ろした。シアはすぐに細剣で 受け止めると、お腹に蹴りを入れた。グールは蹴りを 入れるとは思わず、まともに食らった。 「良い蹴りだ」 グールは立ち上がると、素早くシアに攻撃を仕掛けた。 シアは瞬時にグールの背後に回って、細剣で背中を 斬る。シアは黙ったまま、グールを睨み付けて細剣を 向けた。グールは爆弾を取り出した。 「…爆弾…」 シアは目を丸くした。 「この爆発は威力が高い。俺がこれを投げれば、全てが 吹っ飛ぶ。死ぬかもしれないぜ。俺もお前も」 グールはそう言うとニヤリと笑う。 「こうやって、お前がまだ5歳の頃に助けた男も、お前と 同じ歳のガキも殺した」 「お前が…殺したのか…!?」 シアは手を震わせた。 「そうだよ、お前を助けた男は遺体も見つかっていない みたいだけどな」 グールは楽しそうに言った。 「何故、そんなことを…!!」 シアは怒りに任せて拳を振り上げて叫んだ。 グールはシアの腕を掴んで顔を近づけた。 「誰でも良かったんだけどな、幸せそうな顔が 嫌いでね。怒りに狂った姿や悲しい顔を見ていると、 心がワクワクしてくるんだよ」 グールはニヤニヤとしながら、シアを投げ飛ばした。 「…っっ」 シアはすぐに立ち上がって、細剣をグールに振り 下ろそうとした。その時だった。グールは爆弾を 投げつけた。 「うわぁぁっ!!!!」 シアは爆弾で吹き飛ばされ、そのまま川へと 放り出された。 続く
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