第2話 自分を許す

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第2話 自分を許す

 金髪で大剣を背負っている男は、 のんびりとカフェでコーヒーを 飲んでいた。この男の名は レイ・ブルーズ。職業は剣士だ。 依頼があれば、剣士として護衛を したり、人助けをしている。 レイはコーヒーを飲み終わると すぐにカフェを出た。  爽やかな風が心地いい。暑くも なく寒くもなく気温もちょうどいい。 こんな穏やかな日々が続けばいいと 思う。しかし、レイはなんとなく 穏やかな日々が続かないような気がした。 根拠はないのだが…  レイは風を感じながら歩いていると、 川沿いに人が倒れているのを発見する。 レイはすぐに川沿いへと向かった。 「おい! しっかりしろ!!」 レイが助けたのはシアだ。シアは、 グールの爆弾で吹き飛ばされ、川に 流されてきた。  レイは咄嗟に心臓マッサージを する。しかし、シアの反応はない。 レイは、病院に連絡をして医師が くるまで、心臓マッサージをした。 「…っ」 シアが動いたのを見て、レイは 安心した。 「…誰…??」 シアは微かにレイの姿を捉えて、 口を開いた。 「…俺はレイ・ブルーズだ。大丈夫か?」 レイはそう言うと、シアは起き上がろうと した。 「動くな、ケガしてるんだぞ」 レイはシアの身体を支えながら、静かに 言った。シアはそれでも続けて答えた。 「私はシア・コールド。助けてくれて ありがとう」 「喋るな、今、医者呼んでる」 レイはそう言うと、シアを楽な態勢に させた。  数分後、医師がやってきてシアを 運んだ。レイも病院まで付き合った。  治療が終わって、シアは眠りについて いる。命は助かったようだ。  レイはシアが起きるまで待つことに なった。というか、ここまで連れてきて、 そのまま放っておくわけにはいかない。  いつの間にか夜の11時を回っていた。 レイも眠くなってきて、椅子に座ったまま、 知らぬ間に夢の中へ入っていった。  朝日が顔を照らして目を覚ましたレイは、 窓から外を眺めた。それから、数分後、シアも 目を覚ました。 「…????」 シアはゆっくりと起き上がった。 「気分は大丈夫か?」 レイは優しく声をかけた。 「えっ…? あぁ、大丈夫だ」 シアは戸惑いながら答え、辺りを見回す。 そして、ようやく病院にいるということを 理解した。 「あれ…? 何があったんだ…??」 シアは一息ついて頭を整理した。 「グール!!! あいつは…」 急にシアが思い出して大きな声で言った。 「…落ち着け」 レイは静かにシアに言って、落ち着かせた。 「…そうだ…また、私は助けられなかった…」 シアはそう言うと顔を伏せた。レイは何も 言わずに待った。 「お世話になった大切な街も大切な人も 結局、どんなに強くなっても私には守れないんだ」 シアは拳を握って声を震わせた。次第に涙も 溢れてきている。レイはそんなシアの声を遮る ことなく聞いていた。 「なんで、守ることができないんだろ…」 シアはそう言うと、こらえきれなくなった 涙が頬を濡らした。その後、暫くシアは 黙ったまま、ただ、泣いていた。それを 見ていたレイは、ようやく口を開いた。 「…誰もが思うことだ。どんなに強く なっても守れないときがある。そんな時、 守れないと自分を責めたくなる。それは 俺も同じだ」 レイは自分自身の過去を思い出した。 レイもかつては大切な女性がいた。 いつも、精神的に追い詰められたとき、 助けられた。そんな女性を本気で守りたいと 思って、強くなると決意して必死で守ろうと した。でも、大切な女性を守ることが できずに、命を落としてしまった。その時、 大切にしていた女性の身内や周囲の人たちに 責められたこともあった。剣士でありながら、 何故、守れなかったのかと。それから、ずっと 苦しめられてきた。  レイは一息ついてから答えた。 「俺も大切な人を守れなくて、自分を責めた。 苦しんだ。でも、剣士とか騎士とかいう前に ひとりの人間なんだ。俺もシアも」 シアは黙ってレイの話を聞いていた。そして、 涙は更に溢れていた。 「だから、守れなくて悔しい気持ちも自分を 責めてしまう気持ちも出てくるのは、自然な こと。でも、そんな自分を許してやれ。もう、 自分自身を苦しめるな」 レイは言葉を選んで言ったつもりだったが、 本当にこの言葉で良かったのか疑問だった。 「ありがとう、レイ」 シアは泣きながら感謝し、レイに抱きついた。 シアはレイの胸で大泣きした。 「…」 レイは突然の出来事にどうすればいいか わからなかったが、レイの胸で泣くシアを 見守った。 続く
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