地球滅亡の前夜

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 地球が滅亡する前夜。  電気が消された真っ暗な部屋で、ぼくはその瞬間を待っている。死んだように静かな部屋で。  ぼくは残り時間を確認しようと枕元に置いてある目覚まし時計を見た。  暗闇でも光る秒針が、チッチッチッと真面目に時を刻んでいる。時計が合っていれば、あと少しで午前零時になる。つまり地球はもうすぐ終わるんだ。明日という日はもうこない。  そのとき、ピコンという音がなり、スマホにメッセージが届いた。  ドキッとする。だれだろう。もしかして友だち?   画面を覗いてみる。  お天気アプリからのメッセージだった。  くだらない。そもそもぼくにメッセージを送ってくるような友だちはいない。だれもぼくの携帯番号を知るわけがない。なぜなら、ぼくは一匹狼だからだ。  お天気アプリからのお知らせは避難指示の警報だった。  猛烈な勢いの台風が迫っているらしい。きっとそれが地球を滅亡へと導くのだ。地上のあらゆるものを吹き飛ばすほどの猛烈な台風に違いない。海は荒れ、人はもちろん建物さえも軽々と空へと舞い上がるだろう。  ガタガタと激しく窓が揺れた。いよいよだ。  ぼくはこれまでの日々を思い返す。  滅亡までのカウントダウンを数えながら、必死に『やりたいことリスト』をノートに書き綴ろうと足掻いた日々だった。そのあいだ、テレビはブラウン管から液晶に変わった。子機を使って会話をしていた両親とのやり取りは携帯でのメールのやり取りに変わり、いまではスマホ。インターネットという世界を知った。  インターネットの掲示板はきたるべき地球の滅亡を嘆く人々の書き込みで溢れ返っていた。  「予言が本当だったらどうしよう」、「最近の大雨、やばすぎ。予言はマジなわけ?」、「まだたくさんやりたいことがあるのに」「地球は滅亡してほしくない」、ほかにもたくさんの書き込みがあったことを覚えている。  いまごろになって、みんな後悔している。やりたいことをやってこなかったことを。
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