地球滅亡の前夜

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 有名な予言者の予言ではもうすぐ地球は滅亡することになっている。日付が変わる午前零時になった瞬間だ。どうやって滅亡するのか。詳細は不明。予言では恐怖の台風がやってくるということだった。  10、9、8、秒針を一心に見つめる。どんな最後が待ち受けるんだ。  7、6、5、ぼくは本当にやりたいことをやれたのだろうか。  4、3、こういう生き方でよかったのだろうか。  2、1、その瞬間、ぼくは雄叫びを上げた。終わった。ぼくの人生。  0。日付が変わった。が、なにも起こらない。  ああ、なんということだ。ふつうに明日が来てしまった。つまりあさっても来るということだ。だったら仕方ない。明日から学校に行こう。きっぱり決めた。  ぼくは部屋から廊下に出た。ずいぶん久しぶりに部屋を出た気がする。  ねえ、と下の階に呼びかける。電気はついていない。真っ暗だ。  ぼくにはお父さんとお母さんがいる。ぼくは一人っ子だから、二階にはぼくの部屋があるだけで、下の階にお父さんとお母さんがいた。  ふたりとも眠っているのかな。 「ぼくは学校に行くことにしたよ」  少し声を張って言ってみたけど返事はない。まるでだれもいないみたい。  そういえば最近、お父さんもお母さんも見ていない。ぼくの体もヒョロヒョロだ。最後にご飯を食べたのはいつだろうか。  そこでハッとした。  そうだ。思い出した。お父さんもお母さんも死んじゃったんだ。  ぼくは部屋に戻ると、『やりたいことリスト』を書いたノートをじっと見る。  ノートは中学校に入学したときにお母さんが買ってくれたノートで、最初のページが開かれたままだ。  まだ一行も書いていない。ずっと部屋にいてゲームばかりしていた。  けっきょくやりたいことがなにも見つからないまま生きてきたんだ。  そりゃそうだろう。だって地球が滅亡するってことになってたんだもん。  ああ、こんなことなら学校に行っておけばよかった。  地球は滅亡しないのに、ぼくはもうやり直すことはできない。  お父さん。お母さん。ごめんね。 『やりたいことリスト』を書こうとしたノート。そのノートに、やりたいことを書こうとしても、ぼくはもう書けない。だって、ぼくはもう死んじゃったんだ。なんにも食べるものがなくなって。
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