アイサレタイノ

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***  しかし手に入れたら、目の前で私に愛の言葉を口にするこの男の事が、次第につまらない人間に思え始めた。  そんな時出逢ったのが、貴文(たかふみ)だった。  アパレル関連の事業を主に扱う企業の創業者である彼は、見た目も、学歴も、どれをとっても駿よりも優れていた。  そして悪魔との契約通り、貴文も駿同様、すぐに私を愛するようになった。   この人こそ私にふさわしい、運命の人だわ!  そう感じ、私はあれほど求め続けてきた駿をあっさり捨てた。  泣きながら、嫌だ、別れたくないと訴える彼を前に、悪魔に言われた『強欲』という言葉が脳裏に浮かんだ。  確かに、その通りかもね。  だけど世界中の男達が私を愛してくれるなら、こんな男に執着する必要なんて、どこにもない。  そんな気がした。  貴文との関係は、良好だった。  彼は私を溺愛し、望むモノは何でも与え、満たしてくれた。  だけどしばらく経つと再び、新たな欲が芽生えた。  この男よりも、世の中にはもっと私にふさわしい人間がいるんじゃないかって。  私の欲は、留まるところを知らなかった。  人気の俳優や、政財界の大物の二世。  大手企業の社長や、世界的に有名なデザイナーも、一目私を見るなり恋におちた。  だから私はより優れた男性が現れる度、付き合っては別れるという浅く薄っぺらな恋愛を繰り返した。  でも、当然でしょう?きっと誰だって、そうするわ。  悪魔との契約通り、世界中の男が皆私を好きになってくれるんだもの。  私は何も、悪くなんてない。
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