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アイサレタイノ
「へぇ......。
なら君は、世の中のすべての男に愛されたいと?」
真っ黒なスーツに身を包んだ男がソファーに腰を掛けたまま、テーブルの上に置かれた籠に入れられたチョコレートを一粒つまみ、口元に運んでモグモグと咀嚼しながら笑って聞いた。
「ええ、そうよ。
だって私じゃなく、あんな女が駿に選ばれるとか......。
絶対に、許せない」
忌々しい気持ちで、口元を歪め答えた。
「ふーん、そっか。
でもそれならその、君の幼なじみの駿って男にだけ愛されたいって、望めば良いのに」
笑顔のまま、また男は言った。
しかし私は、ふんと鼻で嗤った。
「叶えて貰える願い事は、ひとつだけなのよね?
なら駿よりも良い男が現れた時のために、保険を掛けておきたいじゃない」
それを聞き、男はニヤリと笑った。
「なるほど......ホント、強欲だなぁ。
まぁ別に、僕は良いけどね。
ならそれが君の、願いと言う事で。
......だけど対価は、分かってるよね?」
微笑を浮かべ、私は小さく頷き答えた。
「ええ、分かっているわ。
私が死んだ後、魂をあなたにあげれば良いのよね?」
男の纏う軽薄な雰囲気が、邪悪なモノへと変わった。
そして、次の瞬間。
......真っ黒な闇が男を包み込み、その闇が消え去った時には、彼の背に漆黒の翼が生えていた。
「うん、分かってるならOK。
じゃあ君の願いを、叶えてあげる。
あ、ちなみに。
......8日以内なら、クーリングオフも利くから。
でも9日過ぎたら絶対にキャンセル出来なくなるから、気を付けてね!」
ニコニコと邪気のない笑顔で、悪魔は告げた。
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