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私と駿は、幼なじみだった。
両親同士も仲が良く、いつか二人が結ばれたら良いのにねなんて言われて育てられてきたから、私はすっかりその気になっていたし、彼もそうなのだろうと思い込んでいた。
なのに駿に、ある日言われたのだ。
大切な人が出来たから、私にも一度、会って欲しいと。
信じられなかった。
だって私は、ずっと駿の事だけを見つめて来たのに。
その子に会って、苛立ちが増した。
だって彼女より、私の方が誰が見ても可愛い。
それに学歴も、働いている会社も、家柄も。
何ひとつ、私は彼女に負けているとは思えない。
なのに『彼女を守ってあげたい』だなんていうふざけた理由で私ではなく、こんなつまらない女を選ぶと言うのか。
......許せないと、思った。
だって私はこれまで、駿なんかよりもずっと良い条件の男達の告白だって、断ってきたのに。
***
「遥、ごめん。
やっぱり俺が、どうかしてた。
菜穂に惹かれたのはお前の言う通り、一時の気の迷いだったんだと思う。
本当に俺が愛してるのは遥、お前だけだよ」
呼び出され、虚ろな目を私に向け駿は言った。
だから私は、笑って答えた。
「良いのよ、駿。
駿はあの子に、騙されてただけなんだから」
......勝った。私はあの子に、勝ったんだわ!
でもまぁ、当然と言えば当然よね。
だって私の方が彼女よりも、すべてにおいて優れているんだもの。
見た目の美しさも、知力も、財力も。
こんなに簡単にいくのなら、悪魔の力をもっと早く借りておけば良かったかも。
......だけどこれで駿は、私の元に戻ってきてくれた。
それに死んだ後の事なんて、知ったことじゃないわ。
......魂でも何でも、好きにしたらいい。
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