38人が本棚に入れています
本棚に追加
エピローグ
ある日の放課後。
祐樹は一柳先生から食事に誘われた。私服に着替え、早めに待ち合わせの公園に行くと、「彼女」がいた。
街灯から離れていたけれど、誰だかすぐに分かった。
明日香はニヤリと笑い、年上の幼馴染の威厳を見せてきた。
祐樹は硬直した姿で立ち尽くしていた。
「ユウくんの作戦勝ち。ピンチをチャンスに!一柳先生を完全に味方につけたし、私たち他の生徒も一柳先生が変わったと喜んでいる。
もちろんユウくんが卒業するまでの関係なんでしょ。私も受験で忙しくなるし、しばらく一柳先生と仲良くするのもいいんじゃない?」
明日香が祐樹の肩に手を置く。
「放課後の食事くらいなら」
しっかりと祐樹は抱きしめられていた。
祐樹にはよく分かっていた。
好きかどうかの感情は別として、小さいときから続く明日香との時間がかけがえのないものであることを……。
「卒業まで待ってるから」
明日香はそう言い残し足早に立ち去った。
祐樹は自分の考えがまとまらないまま、あの日、自分を待っていた不思議な運命について考えていた。
厳しい信念の持ち主だけれど可愛らしいところもある。そして高槻彩香に似た一柳先生。
祐樹はもっともっと一柳先生について知りたいと思った。
祐樹の耳に、後ろから軽やかな靴音が聞こえてきた。
最初のコメントを投稿しよう!