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プロローグ
真白祐樹は進学校として有名な私立白樺高校進学コースに入学後、すぐに美術部入学を決めた。
一年上の幼馴染、美術部副部長の水城明日香に引っ張られ美術部に連れて行かれ、そのまま入部届を書かされた。
多分、他の選択は許されなかった筈である。
九月に入ってからの美術部での打ち合わせ会議のときのこと。
「学園祭に出品する作品だけど、自分の描きたいものをテスト作品としてスケッチブックに描いてくれる」
セミロングの髪に丸眼鏡がよく似合う。明るく悪戯っぽい笑顔が似合う眼鏡美人。
次期部長確実な水城明日香の呼びかけに応え、すぐに祐樹は女性の肖像画を描いた。明日香は食い入るように絵を見つめる。
「誰?この人」
「女優の高槻彩香です。僕ファンなんです」
他の部員が覗き込む。
「確かに。だけどな」
「別のヤツに似てるんじゃ……」
「一柳だろう」
祐樹はパッチリした目で先輩たちを見回す。申し訳なさそうに肩をすくめ、はにかんだ笑顔で説明する。
「僕ファンなので、この絵が学園祭で話題になって高槻さん本人に会えたらと……」
明日香はそれ以上の説明を許さなかった。
「却下」
祐樹の願いは永遠に夢のままで終わったのである。
明日香と一緒の帰り道。
「真面目にやらないと怒るよ」
明日香から理不尽なお説教を延々と受ける羽目になった。
それにしても「一柳」とは一体?
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