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一柳美里先生について
説明しよう｡
一柳美里先生。私立白樺高校の生徒指導副主任｡
白樺高校は国家公務員の登竜門と呼ばれている。成績優秀な生徒は名門大学への推薦状が貰えるので､「進学コース」の生徒は全員必死だ｡
とはいえ生徒全員､国家公務員をめざしているはずもなく、「ヤンキー」と呼ばれる生徒はいくらでもいる。
一柳先生は校内校外、校則で禁止された場所に生徒が現れると冷たい笑いで待ち構えている。
有無を言わせず生徒指導室に直行で、数多くの生徒が退学に追い込まれてきた。
年齢は三十一歳と教師の紹介ページにあった。既婚未婚までは書かれていなかったが、間違いなく未婚だと多くの生徒が確信している。
ロングヘアーの黒髪に何でも見通す大きな目。この目に動揺が現れたことは一度もない。常に冷静、平静に生徒たちの動向を観察している｡
生徒からは「目だけで十分怖い」「シリアルキラーの目」「FROZEN EYE」
と恐怖と憎しみをこめて言われていた。
誰かが人気女優の高槻彩香に似ていると言ったことがある。
高槻彩香に似せようと美容整形し､無残に失敗したら一柳先生になるという説明が、数多くの生徒たちの共感を得ていた。
ナイトブルーのブラウスにブルーグリーンのタイトスカート、ナイトグリーンのクルーソックスがいつもの服装。この色彩が視界に入ったら、何かが発覚したと悟りを開かないといけないのだそうだ。
高槻彩香に似ているという一柳先生｡
祐樹は気にはなってたものの､自分が三年間、この先生と関わることは絶対にないだろうと信じていた。
一年進学コース｡一学期の期末考査では学年四位。ブレザーの制服もネクタイもきちんと着こなしている。
生徒指導の先生が注目するような人間ではない｡
先生が注目するのは､度々頭髪や服装､生活態度で注意を受けている生徒たちと決まっている。
ただし……。
ただし……。
祐樹には、1％の不安が残されていたのである。
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