待っていた一柳先生について

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「アルバイトをしたから成績が下がったなんて絶対になりません。今より成績を上げてみせます」 「君のテストの順位は何も問題ない。校則違反が問題です。さあ、行くから」 「アルバイトでお金を貯めて大学に進学して、きっと文部科学省に入ります。父の理想を受け継ぎたいんです」 「崇高な目標だけれど、それなら校則違反をするべきじゃなかった。君の夢は終わった。自業自得だから」  一柳先生につかまれた左腕が痺れてくる。 「何かまだ言うことがある?学校に戻ったら君の教室から自分のものを持ち帰ってもらう」  一柳先生に引っ張られ、マンションの玄関に向かう。  万事休す。  追い詰められた状況下。  様々な思い出が、走馬灯のように祐樹の心を通り過ぎていく。  両親と遊びに出かけたこと。  小学生の頃に亡くなった父のこと。  明日香との思い出。  明日香の上から目線の言葉。 「私を好きになりなさい」  それから一柳先生が、大好きな高槻彩香に似ていると思ったこと。  思い出が渦を巻き、悠馬の心を惑わせる。  明日香や高槻彩香、一柳先生の姿が目の前で点滅する。  一柳先生と、ずっとこんな関係でいるなんて絶対にイヤだ。  高槻彩香に似ている一柳先生なんだから……。  そして次の瞬間!    
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