探して、待って、迎えられて

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 宮益坂の一本奥の道にもコンビニがある。ここから徒歩二分。異常なまでの便利さはさすが渋谷だ。  ここなら、私の求めるものがあるだろうか。  パンプスを鳴らして入口を目指す。  左肩にブランド品のビジネスバッグを構え、清潔感のあるカットソーと七分丈パンツをキッチリ着こなす。夏場でも堕落は許さない。どこからどう見ても、外回り途中、あるいは洒落たランチに出かけるキャリアウーマンのはずだ。  前島(まえしま)麻子(あさこ)、会社員(主任クラス)。本日付で三十五歳、独身(彼氏もなし)。  平日の日課、最近の昼休みのリフレッシュ方法、それは。  お気に入りの喫茶店ブランドの大容量(290ml)の冷たいミルクコーヒーを一本買って、ゆっくり楽しむこと。お昼自体は百二十円のおにぎり(梅)やペラペラのサンドイッチで済ますのがほとんど。しかも大抵の場合は歩き食べ。行儀が悪いことは承知だけど、私には大好きなドリンクを味わう時間のほうが大事なのだ。
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