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〜 ロボ 視点 〜
八月に入り、本格的に暑くなって来たから休日の昼間は極力出たく無い
こんな暑い日は、朝早くから散歩に行ったし、夜は遅めに散歩に行く
其れだけで十分カロリー消費するし、バイトの時にお客と一緒にやるからな
今こうして、ソファに座ってジジババ達と昼ドラってやつを見ても問題ない
゙ ツリーと連動するピアノ? ゙
゙ そう君の為に、練習したんだ ゙
「 ……… 」
外はこんなクソ暑いのに、昼ドラの中身はクリスマスシーズンになっている
季節感ゼロのドラマを、飛び飛び観てるからなんでこいつ等が付き合うようになってるのかも、さっぱり分からん
とりあえず、手に持ってる六百グラムの犬缶を、人間がゼリー食ってるような感覚でスプーンで掬い、口へと含みながら観てるが…
やっぱり分からん
「 ロマンチックね!この曲、カノンってやつよ 」
「 人間がよく、結婚式に使うの 」
「 ふーん…? 」
一緒に観てるジジババ…ジジは観てないから、ババ達はピアノを演奏する度にイルミネーションが点灯するツリーを見て、楽しそうに話す
゙ 俺と…結婚してください ゙
゙ はい……もちろんです! ゙
「 きゃー来たわ!エチエチね! 」
「 いやー、私も言われてみたいー! 」
何がエロいのか分からないが、テンション上がって話すババ達に、気になった単語を問う
「 つーか、けっこんってなんだ?前に、してないんですか?って客がいた 」
少し前に、新しく担当になった女がウォーミングアップのウォーキングマシンを使ってる時、俺がメニューを書きながら傍に立っていれば、手を見た彼女は疑問そうに問いかけて来た
゙ ロボさんって、結婚してないんですか?私は、ほら…既婚者ですよ ゙
゙ ………? ゙
手に着けていた指輪ってやつを見せてきた女に、俺は妻はいると答えたのだが、結婚式は?と問われた
そんなの山暮らしの俺が知る訳もなく、意味が分からない為に、知識が多そうなババ達に聞く
「 結婚と言うのはねー!えっとー!そう!皆の前でチューするやつ! 」
パトラの言葉に、ババ達へと視線を向けて首を捻る
「 いつもやってるだろ? 」
「 ちーがーう!其れとは違って、うーん… 」
「 夫婦になることを望んだ二人が、婚姻届けって言う紙にサインをして…夫婦になるよ 」
パトラが首を傾げた為に、三色の毛を持つミーシャが変わりに答えるも、またよく分からない単語が出てきたと思う
「 えっと…婚姻届けを提出した夫婦?が…結婚式場で…結婚するの。そこで誓のキスをするのよ。人間は 」
「 ふーん?番の契約とは違うのか… 」
人間同士は番の契約はしないって言うしな
俺やボリスは狼だから、人間相手にしたんだが……
人間相手ってのは別の方法が有るみたいだ
缶の中身をスプーンで掬って口へと含んでいれば、ババの中では最高齢のテラは、背凭れの上に立ち、瞳を向けて来た
「 ロボ、プレゼントを考えていたらしいけど…指輪なんてどうかしら? 」
「 指輪? 」
「 えぇ、貴方達は獣だから番がいる、いないは匂いで分かるかもしれないけど…人間はそんなわけにはいかないの。由羅の薬指に指輪があるだけで…他の雌も雄も近付かないわ 」
首にやる番の契約とは別に、形であり見えるってものか
視線をドラマへと向ければ、男は女の薬指に指輪ってのを嵌めてたし、女は嬉しそうにしていた
「 なるほど… 」
缶の周りに付いた部分をスプーンで擦って、全て口へと含めば、立ち上がる
「 プレゼント、指輪にしてみるさ。其れで由羅が喜ぶならな 」
「 えぇ、きっと喜ぶわ 」
「 お高い買い物きたー! 」
「 リアル給料三ヶ月分ってなりそうだね。いや、十二月だから四ヶ月分? 」
値段は、後から指輪が売ってそうな場所にでも見てみようと思い、ババ達の言葉に頷き、缶をシンクに置き、中を水で洗い、缶専用のゴミ箱に入れ
次の缶を戸棚から取り、蓋を開けてはソファに戻る
「 そう言えば、クリスマスは駅前にピアノが出るらしいね!さっきのシチュしましょ! 」
「 シチュ? 」
パトラの言葉に傾げるも、ミーシャは俺の膝に両手を置き、ごく普通にスプーンに乗ってた犬缶を食べれば、舌舐め摺りをし答えた
「 シチュエーション。一通りの流れって事よ。ロボは当日までに指輪を準備する。クリスマスの日、由良を連れて駅前に行く、そこにあるピアノを弾いた後に、゙ 結婚してください ゙って告白するの 」
「 いやーん!なんてロマンチックなのー!キュンキュンしちゃう 」
「 由羅がどんな顔をするか、直接見れないのは寂しいけど、帰ってきたらわかるだろうね 」
パトラとミーシャだけで話が進んでるが、背凭れの上で毛づくろいしてるテラの方へと目を向ければ、ババはゆるりと尻尾を揺らす
「 とても素敵よ。ロボ、一つ大事なのは、結婚指輪と…サイズを間違えないことね 」
「 サイズ…? 」
「 由羅の薬指よ!ここの指! 」
パトラは片手を上げて肉球を向けて来るが、どこの指って疑問になれば、スプーンを持ってる手に、ミーシャは触れた
「 この指よ、ここ 」
「 これか…… 」
右手の薬指へと触れたミーシャは、直ぐに移動し、今度は缶を持つ左手の薬指へと触れる
「 それもこっちの。二人とも、左手の薬指よ。いい、二つ準備するの…一つでもいいっけ? 」
「 良かったと思う…二つ目はあとから買わなきゃ、ロボの給料じゃ二個も買えないわ 」
「 そうね…ロボ、先に由羅の指輪から買うの。貴方は後回しよ 」
「 …分かった、由羅の指輪を買う 」
ミーシャの言葉に頷けば、パトラはとろけたようにテーブルに横たわり、身を捻る
「 いいなぁ、いいなぁ。私もいつかはイケメンの王子様に、大きなマグロの刺し身をくれたら…きっとメロメロになっちゃう! 」
「 私は大きな鮭の切り身がいいわ 」
「( なんか圧を感じる… )」
「「( シチュ選んだから、買ってこい )」」
このババ達、ジジより怖いと思うんだが気のせいだろうか…
ジジ達なんて、それぞれに好きな場所に寝て余り動かないからな
「 オラオラオラ!!アポロ様のお通りだ!! 」
「 アポロ!今尻尾タッチしたので、次は貴方が鬼ですよ! 」
「 やったな!ネコの呼吸!参の型…ジャンピングターーーチ!! 」
「 や、やられましたぁーー! 」
「( うるせぇ奴等いたわ…… )」
猫部屋からリビングまで走って、テーブルの上を掛け走っては、ソファから跳んでオセロに向かって行くやつ
そして、オセロもまた逃げるように走り去るけど、アポロが追い掛けるから戻ってくるんだよなぁ…
ガシャン!ドタン!!と激しい音が聞こえるも、ババ達はそれを見て笑っていた
「 ふはっ、アポロ。貴方ちょっと弛んだんじゃない?もう息が上がってるの? 」
「 うるせぇ!まだまだこれからだぜ 」
「 オセロ、頑張ってね。応援してるわ 」
「 はい!! 」
いや、追いかけっこを応援する必要ないだろう
てか、猫って夜行性だろ?
なんてこんな昼間から運動会をやってんだよ…寝とけよ
こっちは昼ドラ終わった後のクッキング観てんだよ
口へとスプーンを入れようとすれば、参戦したノアールが頭に乗ってきて、前歯にカンッ!とスプーンが当たった
「 っ〜〜…ノアール…降りろ… 」
「 ほほっ、すまんすまん 」
絶対にすまんとか思ってない言い方で、逃げて行ったな…
おやつをあげるの無しにしてやろうかな……
「 ロボ、御前…その頬の傷どうしたんだ?由羅さんに… 」
「 ジジだ。ジジ達が騒いでついた傷だ 」
勘違いするなよ
由羅が引っ掻くときは背中だけだ
だが、顔やら腕にある傷は騒ぎまくってる
ジジ達がやったやつだ
あいつ等は、由羅の前では猫かぶって大人しいけど、いない昼間は運動会やってるからな…
その真ん中に居たら、ボロボロになる……
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