オマケ 狼もバイトをする

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「( …いや、高くね? )」 後日、ボリスに聞いたらニヤニヤしそうだから、ちょっと頼りになる人間の高岡(先輩)っていうインストラクターに、 コソッと良さげな指輪を売ってる場所がないか聞いて、教えてもらったから来たのはいいが… ゼロの数に指を動かしたが、如何しても十二月までの給料がほぼ全額がこっちに行く気がしてならない え、人間ってこんな高いものを贈るの? 獲物じゃだめなのかって疑問になり、ガラスケースの中を見ていれば、スーツを着た男がやってきた 「 今日はどういった物をお探しですか? 」 話しかけるな…とバイトをし始めて言えなくなった為に、少し眉を寄せぐもった後に、ガラスケースの方を見て答える 「 結婚指輪…ってのを探してる 」 「 プロポーズされるのですね? 」 「 そう、なるのか…そうだな 」 番にはなってるが、人間同士のプロポーズはまだだった為に頷けば、男は緩く笑った 「 此方のはデザインが増産型なので、デザインから御選びになられては如何ですか? 」 「 その方が…相手は喜ぶか? 」 「 勿論ですよ。世界に一つだけの指輪になりますから 」 「 ……なら、それで 」 「 では、こちらにどうぞ 」 由羅が喜ぶなら構わないと頷き、男に誘われるまま店内にあるテーブルの椅子へと座れば、男は店の中からいくつか紙を持って来て、何もない紙とペンを置けば色んな写真が印刷してある紙を見せる 「 どの様な、ご相手なのですか? 」 「 秘書…?って仕事をしてる 」 「 では、普段使いが出来るシンプルなデザインが良さそうですね。アレルギーはお持ちですか? 」 「 …無いと思う 」 「 では、マテリアルから選びましょう。此方はリング状ですがこの形は変えれます。質感と色を見て頂けたら 」 よく分からなすぎて、一人で来たことに後悔しそうだ… 淡々と話が進む中で、男は小さなケースに入った其々のリングを見せてきた 「 此方はハードプラチナ。希少性の高いプラチナを95%使ったものです。 プラチナの白く美しい輝きを最大限に活かすために… 」 確かにキラキラはしてるが、由羅がプラチナに拘るとは思わないんだが… 少し首を傾げた俺に、男は次の色が付いたものを見せる 「 此方はピンクゴールド、肌に馴染む柔らかなピンク色を表現してます 」 「 そのピンクでも、こっちの金色でもなく。これなんだ? 」 「 此方はプラチナゴールド。通常のホワイトゴールドとは異なりメッキを施して無いので、コーティング剥離の心配がなく、安心して永く着用いただけます 」 永く使えるならこれがいいんじゃないかって思う いや、由羅が居たら聞くんだが… サプライズで渡そうとしてるから聞いたら意味無いよな 「 永く使えるなら…それで 」 「 此方で?では、マテリアルはプラチナゴールドですね。次はデザインですが… 」 ファイルから紙を取り出した男は、其れを置いた後に席を立ち、他の店員と少し話せばガラスケースの中から何やら取り出して持ってきた 「 お忙しい方でしたら、此方のダイヤ装飾されて出っ張りがある方より、ライン型は如何でしょう?V系、ひねり、ウェーブなどありますよ。此方はマテリアルに嵌め込むので表面の凹凸が少なく気にならないかと…触ってみてください 」 「 嗚呼…… 」 そんな事をタラタラと言われても違いなんてあるのか?と疑問に思い、言われた通りに指輪を摘み触れては、小さなそれを表面やら、中側も触る 「 此方の店舗で扱うのは全て熟練の職人が一つ一つ丹念に手作りをしてるので、着け外しが苦ではないよう、前提的に丸み帯びた造りをしてます。勿論、四角いのもありますけどね 」 「 その触り心地いいの…いいな 」 内側が四角いのは、由羅の手を傷付けてしまいそうだが、丸みを帯びた形状ならそれも無いんじゃないかと思う 「 これ、いいと思う 」 「 其方は蘭ですね。胡蝶蘭をイメージしてます。花言葉ば 幸福が飛んでくる ゙や゙ 純粋な愛 ゙等もありますので…。其の指輪のデザインも同じ意味合いを込めて 」 胡蝶蘭、どんな花のかはピンっと来ないが 花言葉を聞けば、由羅やジジババ達に幸福が飛んでくるって意味があって良さそうだ 「 それで 」 「 畏まりました。ダイヤはどの辺りにお付けしましょうか 」 最初はよく分からない内容だったが、丁寧に教えてくれるし、デザインも似たようなものがあるから想像は付きやすかった 彼はデザインも担当してるらしく、紙に指輪を描いていけば、ダイヤの数や位置すら上手く決めてくれている 中央に一つ、胡蝶蘭の花みたいにダイヤを置き、その左右にも小さなダイヤを並べたウェーブ系だ 「 こんな感じで如何でしょうか? 」 「 凄く良さそうだ 」 「 ありがとうございます。では、入れる箱とサイズを御選びください 」 ズラッと並んだサイズが其々違った指輪があり、箱の色も微妙に異なる 俺はそれっぽい指輪に触れ、軽く周りを撫でては違うと分かり、一つを選ぶ 「 これで、箱は黒で 」 「 畏まりました。もしサイズが違う場合は保証書をお持ち頂けたら作り直させて頂きます 」 「 分かった、色々ありがとう 」 「 いいえ、こちらこそ。では書類にサインしてください 」 金額も事前に教えてくれたし、ガラスケースにあったものより高くはなかった デカイダイヤを装飾するやつよりは値段が安いのだろろうな 「 受取日は? 」 「 十二月二十四日。その日には来る 」 「 畏まりました。では受取日は十二月二十四日ですね。その日に残りの額をお支払いをお願いしても構いませんか? 」 「 嗚呼 」 先に、前金として数万円渡すけれど 先月の給料が残っていたから構わなかった 残りは当日だと頷き、他の話を終えれば俺は店を出る事にした 「 先程のお客様… 」 「 きっと男性へのプレゼントですよ 」 「 素敵ね!成功するといいわ 」 「 きっとしますよ。一生懸命に選んで下さる方なのですから…。サプライズらしいです、いいですね…。務めてよかったです 」 「 えぇ、そうね! 」 帰り際、薄汚いあの白い狼を見掛け ふっと振り返った先に、指輪の店から出て来た、俺に親切に教えた男は柔らかく笑い声を掛けていた 「 おや、また来たのですか?おやつどうぞ 」 狼も仲がいいのだろう、尻尾を振っておやつを貰っていた 飼われる気は無いが、色んな場所を彷徨いてるって感じか… 飼われたらきっと、幸せになるだろうって 今なら応援したくなる ふっと、ネックレスに触れ家に帰る道を急ぐ なんとなく、由羅に会いたくなった まだ、帰っては来ないのだがな…
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