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〜 由羅 視点 〜
猫は、機嫌がいい時擦り寄ってきたりいつもよりお腹を見せてきたりと、さり気無い仕草を見せる
犬は、それ以上に表情にも態度にも出やすいのは、ボリスやロボを見て分かる
前に、家に帰った時に凄くニコニコしてご機嫌な彼が居て、何か良い事はあったんですか?と聞いたら、ちょっとなって笑ってはぐらかされた
その日はいつも以上にスキンシップが多く、夜も激しかったけれど、その笑顔は減り、逆にソワソワしたり、私が何か聞こうとすると驚いたりする
「( 浮気とは…思えませんが… )」
狼の姿で、猫達と会話する様子も多く見られる為に、日頃いない私にとって何があったのか分からない
もしかしたら、猫達の中で好きな子はいるのだろうか?と思ったけれど、
彼の対応は平等であり、猫達もまた其々に好きなタイミングで話していた
そして、そんな些細なすれ違いが気になるまま
夏は終わり、秋は簡単に過ぎ去り
いつの間にか、今日は十二月のクリスマス…
ロボ…人の姿で出会った日のこと覚えていますか?
「 今日は寒くなるから、マフラー着けろよ。雪が降るような匂いもするからな 」
「 ありがとうございます… 」
変わらず毎日玄関まで見送ってくれて、今日は飛びっきり厚着とばかりにコートを着せられた後に、マフラーを着けられた
「 私…車ですし、会社なのでこんなに着けなくても大丈夫ですよ? 」
「 いいんだ。今日は冷え込むからな。ほら…頑張って来てな 」
「 ……はい。行ってきます 」
いつもと変わらず、優しい口付けを交わし、額や頬にまで口付けを落とした彼は、少し笑みを浮かべて片手を振る
そう、クリスマスと言うのにいつもと変わらず仕事なんですよね…
其れが少し寂しいと、玄関の扉を開け外へと出る
「 ロボも仕事ですし…。今年は、イルミネーションは諦めましょうか… 」
ロボと知り合って二年目に、
初めて駅前のイルミネーションを見に行った
人混みが予想されてたから、消えるギリギリぐらいで見に行って、狼だった彼はそれを見てごく普通に呟いた
゙ こんなぶら下がったもの見て…何がいいんだ? ゙
゙ 綺麗じゃないですか? ゙
゙ そうか?由羅の方が綺麗だけどな ゙
゙ っ…… ゙
人が綺麗だという言うイルミネーションより、私の方が綺麗だと言ったあの日から
ロボは頻繁に綺麗だと囁いてくれる
どう頑張っても年々老けていく私とは違い、彼は年々色気を増して格好良くなっていく
嬉しいようで寂しいから、綺麗だと言われると嘘じゃないかな?と思ってしまう…
言わせてるような気がしてならない…
週に三回、多くて四回は身体を重ねる日もあれば、半月程ヤラない日もある
それは御互いの体力次第が大きいけれど、
一番は、ロボが誘ってくるか…来ないかの違い
最近…何かに夢中で、誘ってきてくれませんね…
たまには、私から行為をお願いしてみても…
嫌な顔はしないでくれますかね…
「( はぁー…クリスマスと言うのに気が重い )」
こんな日に、行為がしたいとか変なことを考えてしまうので、さっさと仕事場に行こうと思い車を走らせた
「 おはよう、猫澤くん。今日はクリスマスだな 」
「 おはようございます。そうですね…、社長は御予定があるのですか? 」
「 嗚呼、ボリスと子供達をイルミネーションに誘ってるからな。その後は犬も同伴可能のレストランで食事をする予定だ。ルナが大きなチキンが食べたいと言ってたからな… 」
「 それは楽しそうですね 」
にこやかに話す社長に、何故か高校生になる息子さんがいることは社員は知ってる
最初は驚いていたけど、母親がいなくて…とちょっと悲しそうに演技をしたら、皆さん信用して、子育てをする社長を応援するようになったんですよ
ボリスくんは、どんな言われようでも気にしてないみたいだからいいのでしょうがね
幸せそうですし
「 猫澤くんは、ロボとは無いのか?ボリスが同じ時間帯には終わると言ってたが… 」
「 特に決めてませんね。いつものように彼が夕食を作るみたいなので… 」
「 それもまたいいじゃないか。ゆっくりするクリスマスも悪くない 」
「 そうですね 」
ゆっくりしたところで、ロボは何処か上の空なのでしょうがね
何を考えているのかは分かりませんが、少し寂しいと思っては仕事へと取り掛かる
クリスマスだろうとも、仕事が山積みで其れを終えていけば、昼休みになる
「 …今日はクリスマス仕様ですね。赤と青のコントラストが……ちゃんと、クリスマスって知ってるじゃないですか… 」
昼のお弁当を開けば、テラとマシュマロのおにぎりが入って、その周りやおかずだけの方はクリスマスカラーになっていた
だから、全く知らないまま弁当を向けてきたんじゃないと思うと疑問になる
「 何故……え? 」
クリスマスに誘ってくれないのか、そう呟きかけた時に、いつもなら最後に見る手紙に気付き、
そっと開けば少し漢字の増えた、手紙に驚いた
゙ メリークリスマス、由羅
今日はクリスマスらしいが、
夜…そっちまでむかえに行く。
帰りにちょっとデートしよう。
ジジババがメシを待ってるから、
そんなながくはできないが…
たのしみに待ってる。
それじゃ、ごこからもがんばってな ゙
「 っ……はい。頑張ります 」
彼はきっとサプライズを計画してくれたんだと思った
ちゃんと娘達の事も考えて、長くはデートが出来ないからこそ、
先に終わる彼が此方に来て待ってくださるのでしょうね
少しふてくしてたの嘘のように
泣きそうなほどに胸があつくなる
「 クリスマスデート…楽しみです 」
やる気の無かった午後からの仕事も、
美味しい手作り弁当を食べ終えてから、
張り切って終わらせた
「 三十分早いが、上がろうか 」
「 はい。お疲れ様でした 」
「 お疲れ様 」
先に社長が帰れば、戸締まりをしていく
下にロボが待ってて下さってるって思うから、早めに終えては他のオフィスの社員達に声を掛けていく
「 っ……ロボ。随分と待たせてすみません 」
「 ん?あぁ、疲れ様。お帰り 」
彼は狼の姿ではなく、人の姿のまま愛車の近くにある柱に凭れて待っていてくれた
「 はい、ただいま 」
まるで私の方が犬みたいに、駆け寄れば彼は両手を動かし、マフラーを掴めば巻き直す
「 よし、デートに誘ったのは悪いけど…駅近くまで運転してくれるか? 」
「 勿論いいですよ。駅前の駐車場はいっぱいだと思うので…我社のコインパーキングにします 」
「 助かる 」
「 いえいえ 」
凄く嬉しいと思い、
車を運転するのは苦ではなかった
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