オマケ 狼もバイトをする

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何気無く横を向けば、バイトの為にいつもより少し髪を上げて掻き分けてる彼は、普段より大人っぽく見える ボリスくんとは違うけれど、何処か学生っぽい雰囲気が残るからこそ、髪型一つでこうも印象が変わるものなんだなって改めて思う 「 寒くないですか? 」 「 狼だぞ、冬毛に生え変わってるから平気だ 」 「 フフッ、そうでしたね 」  厚みのあるファー付きのロングコートに変わってる為に、改めて冬毛なんだと思う また夏頃に生え変わりの時期が大変だと思うと、楽しみでもあった 「 着きましたよ 」 「 ん?あぁ、ありがとうな 」 「 いえいえ 」 コインパーキングに車を駐め、財布とスマホだけを持って出れば彼もまた外に出る ふっと息を吐けば、白い息が見え肌が冷えるような感覚がし、暖かなマフラーに少し顔を埋める 「 寒いか? 」 「 平気ですよ 」 「 じゃ…… 」 彼は手袋を外した左手を向けて来た為に、彼と手を見てから右手でそっと取れば指を重ねられ握られる 「 ロボの手…あったかいですね… 」 「 狼だからな。体温が高い… 」 「 と言うか…何か手汗かいてます?走ったりしたんですか? 」 「 ………気のせいだ 」 走らせる程に彼が終わる時間と、私が終わる時間は近くないはず それに会ったときに呼吸は荒くなかったと疑問になれば、彼は手を離し自らのコートで手汗を拭き、軽く手を揺らして乾かしてはまた繋いできた 「 これでいいだろう 」 「 手汗ぐらい気にしませんよ?夏も手を繋いで歩いていましたし… 」 「 今は尋常じゃないぐらい出てるから…夏と比べられない…あぁ… 」 自分の手汗が気になるのか、手を離して振るう彼にクスリと笑ってはその腕を掴み 「 では、これで如何ですか?密着出来ますし、あったかいです 」 「 ……そうだな、いいか 」 「 はい 」 にこやかに笑えば、彼も小さく笑った為に腕を片手で掴んでは歩いて行く どこに行くかは分からないが、其れでも私の速度に合わせてくれる辺り、優しい雄だと思う 「 ふぁ…やっぱり駅前のアーケードは綺麗ですね 」 「 由羅の方が綺麗だが…そうだな 」 歩いていれば駅前のアーケードに辿り着き、道路を挟んだ左右の木やその下に飾りがあるのが素敵だと思う 相変わらずの反応に、クスクスと笑っていればここに来るよりもずっと遅く歩いて行く 「 ロボ、見てください。狼のスノードームです 」 「 ほぅ? 」 色んな屋台が出てる中で、スノードームを専門に出してる場所を見つけ、パッと見ればその中に狼がいた ロボも軽くしゃがみ込めば、目の前で逆さまにしてから元に戻せば、白い雪をイメージしたように舞う 「 狼が灰色なのが残念ですが…これいいですね 」 「 俺はこっちの、マシュマロとテラに似た猫の入ったスノードームがいいけどな 」 「 両方、飾りましょうか? 」 ロボが選んだのは、二匹の猫が楽器を持って演奏してるのであり、私のは岩に狼が立ち、月に向かって吠えてる、よく在り来りな姿 其れでも何となく手放せなくなれば、彼は笑みを零す 「 いいんじゃないか?飾っとこう 」 「 はい!ではこれ二つ下さい 」 「 はい、ありがとうね 」 お年寄りの老人にお金を渡し、スノードームが入った紙袋を受け取れば、またイルミネーションの下を歩いて行く 写真を撮っていれば、聴こえてくる音楽とそれに合わさって点灯する大きなクリスマスツリーがあった 「 音によってライトアップされるのですね。あんな…中央で演奏出来るなんて、私なら恥ずかしいです 」 駅前だからこそ、多く者が見て立ち止まる 素通りする人も中にはいるけれど、其れでも私には出来ないなって思えば、ロボはふっと息を吐く  「 由羅、ちょっと来てくれ 」 「 え…… 」 手を掴み、そのまま引いたロボは先に演奏していた小さな女の子が立ち去った後に、一直線にピアノへと向かった そして、私を近くで止めれば一人で椅子に座り、口で手袋を外し、ポケットに入れる 「 あの人、格好良くない? 」 「 本当…弾くのかな? 」 身長が高くて、遠くから見ても雰囲気共に格好いいロボが座れば立ち止まる人は女の子は多い それと同時に興味本意で見てる男性達の前で、山でずっと過ごして、やっと漢字が少し書けるようになった彼は…何を演奏するのだろうか…? その期待を胸に、見ていればロボはゆっくりと右手を動かした ゆっくりと、まるで幼稚園児がお遊戯の発表会でもしそうな程に、単純的な演奏と曲の選択肢に周りの者は笑う 「 ふはっ、こいぬのマーチだっけ? 」 「 懐かしい、幼稚園で合奏した 」 それも左手の方を使って無い為に、尚更単調に聴こえるけれど…笑ってた彼等はふっと気付く 「 でも、なんか…優しいよね? 」 「 うん、仔犬を見てる感じ 」 仔犬が楽しく過ごしてるのではなく、それを眺めてるような優しさがある 其れがじんわりと胸の奥を熱くさせる 「( 猫の曲を考えた。でも猫踏んじゃったは俺も嫌だし、ジジババ達も嫌だっから…これにした。きっと由羅も嫌だろうから… )」 「 っ…… 」 彼は喋ってないのに、そう言った様に音から聞こえてきた そうですね…あの歌は余り好きでは有りません それに、ピアノの手の位置が可笑しいので、子供に教える曲でもない ふっと笑って、横へと立てば彼の音に合わせて左手を動かす 「 由羅…? 」 「 私、小さい頃から英才教育を受けてきたので…。ピアノもバイオリンも嫌々習ってましたが…今は、習っててよかったと思いますよ 」 「 そうか 」 大切な人が私の為に弾いてくれて、その横で同じ様に弾けるなら嬉しいと思う 一通りの曲が終えれば、ロボは席を立ち笑みを向ける 「 じゃ、由羅も… 」 「 私もですか?では… 」 こんな人前で演奏した時は、凄く嫌な発表会以来だった けれど、今は好きな人が傍に居るから平気ですよ 「 すご、こいぬのマーチから子犬のワルツ? 」 「 レベル高っ…プロ? 」 ボリスとロボが遊んでる様子を思い出して弾いていれば、吠える犬らしからぬ声に視線を向ける 「 お、こらっ…ボリス…。ルナまで… 」 「 ワゥゥン! 」 「 ワフっ! 」 そう言えば社長も来るって言ってましたもんね  ワルツに合わせて、狼の姿をしたボリスとルナちゃんが尻尾を咥えてクルクルと回ってる様子に周りの人達も笑顔になった 二分程度を弾き終えれば、拍手が鳴る 「 …ありがとうございました 」 恥ずかしいけれど、聞いてくれた方々に頭を下げれば、ロボは名を呼んだ 「 由羅 」 「 はい…? 」 自然と反応して彼の方を向けば、そっと片膝を付く様子に、見ていた女性達は察したように息を呑み、私も内心凄く驚いている
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