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彼はコートの中に入れていた小さな黒い箱を取り出せば、蓋を開け私の方に見せて来る
「 っ……! 」
光るシルバーのウェーブ型の指輪を見て、立場を忘れて、口元に片手を置き、悶えるのを堪える
プレゼントを渡したいと言ってたけれど…
これなんて…
「 この三年間、俺は毎日…貴方の笑顔が見れて、沢山の猫達に囲まれて、生活するのが幸せです。此れからも貴方の笑顔を守っていきたい。此れからも十一匹の猫達と暮らしていけたら嬉しいです。猫澤由羅さん…俺と結婚してくれませんか…? 」
きっと彼が買ったのは婚約指輪では無く、結婚指輪だということは見て分かった
常に着けれるようなデザインだからこそ、それが尚更嬉しい
泣くのは我慢しようと思った
けれど、笑顔をもらって、沢山の一途な愛情を向けられてるのは私の方だからこそ、涙は零れ落ちて、何度も頷いていた
「 …もちろんです… 」
「 此れからも大切にする 」
彼に左手を向ければ、指輪をそっと着けてくれた
サイズがピッタリだった事は驚いたけれど、彼はそっと手の甲へと口付けを落とす
「 愛してるよ、由羅 」
「 私もです…! 」
我慢出来ずに抱き着けば、彼はそっと抱き止めて頭に触れてきた
温かい体温と、高鳴る心拍は御互いのものでしょうね
「 おめでとう!お幸せに 」
「 おめでとうございます 」
「( 人前だと言う事を完全に忘れてました… )」
嬉し過ぎて、温かい拍手で現実に引き戻され、顔が熱くなる程に照れてはロボを連れて、その場を離れれば、直ぐに社長達が来た
「 おめでとう、猫澤くん 」
「 ありがとうございます…。人前で、秘書でありながら…すみません 」
「 いや、いいさ。プロポーズは色んな人に祝われた方がいい 」
「 そうですね…はい 」
恥ずかしくて社長の顔を見れなかったけれど、目線の先に三頭の犬達がお利口に座って尻尾を振ってた為に、それぞれに触れる
「 ボリスくん、ルナちゃん。ワルツの時に盛り上げて下さりありがとうございます 」
「 ワフッ!( いいってことよ! )」
「( なんか楽しそうな音だったから! )」
三頭を其々にワシャワシャと撫でてから、気持ちが落ち着き社長へと視線を戻す
「 猫澤くん、此れからレストランでも一緒に来るか? 」
「 お誘いは嬉しいですが。今日は家に娘達が待ってますので、家で食べます 」
「 そうか、では楽しいクリスマスを! 」
「 はい、また! 」
社長は其々のリードを持ち直して行けば、彼等は楽しそうにイルミネーションへと見ながら歩いていた
ルナちゃんがいるから、ボリスくんとルディくんも狼の姿なんでしょうね
「 さて、ロボ…行きましょ…ロボ? 」
振り返れば、そこにはロボがいなかった為に焦って辺りを見渡せば身長の高い彼が、裏路地に入って行くのが見えた為に追い掛ける
「 ロボ…? 」
「 今な…これしかないが我慢してな 」
しゃがみ込んだ彼の先には、親猫と小さな子猫が二匹いた
彼はポケットから、恐らくミーシャやパトラ用のおやつと思われるのもをプレゼントしてから、立ち上がる
「 それじゃ行こうか。急に道に逸れてごめんな? 」
「 いいんですか?猫缶を買ってくるとか 」
「 嗚呼、近くの人が飼い主らしいが…子猫が匂いに誘われて出てきたらしい。だから直ぐに連れて帰るさ 」
「 では、安心ですね 」
子猫はおやつを貰って、上機嫌でお母さんと一緒に帰るでしょうね
「 帰りにケーキ屋寄ろう。猫用ケーキと人間用ケーキを注文してる 」
「 お金…大丈夫なんですか?カード使ってないみたいですが…あ、ロボの指輪は!? 」
「 俺はいい…ネックレスあるし 」
「 良くないです!どこの店です!?明日、行きましょ!明日!!お揃いを買うのです! 」
「( プレゼントした意味…。まぁいいか… )」
この先、何年も何十年先も
貴方と娘達と一緒に過ごせたら幸せですね
「( サーモンケーキ!! )」
「( マグロケーキ! )」
「( カツオケーキ!! )」
「 成功したから、御礼な。サンキュー、ジジババ 」
「( なるほど…ずっと計画練っていたんですね… )」
十一匹分のケーキは豪華ですが、彼も満足気なのでいいでしょう
それに、私もモヤモヤが消えたぐらいにスッキリしましたから
狼の雄を疑うのは良くないですね
そして、ロボはずっとボリスと共にあのジムでアルバイトをし、
次第に正社員になったのはもう少し後の話ですね
〜 オマケ 狼もバイトをする 終 〜
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