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何となく休みの日、ノートパソコンを開きながらペット可の家を探していた
マンションは庭がないし、遊ぶスペースは無いだろうから、一軒家を…
「 此処…。今の家賃より安いな… 」
月々五万円の支払いで、二階だけの一軒家が売りに出されていた
それも、元オーナーは大型犬を飼っていたという
近くには人工池もあり、そこにはドッグランやドッグカフェもある
正に、犬を飼うような人達が集まった場所だと思えば、悪くないと判断し
電話を掛けてから直ぐに、見学に行くことにした
一等地の一角で、青い屋根が特徴的な真っ白な洋風建築の二階建て
「 前のオーナーは、ラブラドールを二頭飼っていたのですが、新しい家を建てた為に此方を売ってしまわれたのです。築二十年程で間取りは8LLDDk。この辺では角になる為に、その分の庭の広さは保証されてます 」
「 へぇ……すごいですね 」
写真より大きな家だった
こんな所で犬と暮らせたら幸せそうだなって思う造りだった
中に入れば、足元は汚れを拭きやすい石のタイルであり、扉も少なく開放的だ
柱の数が心配になるほど少ないが、犬が走ってもぶつからない様にする為か…
「 外と室内には、大型犬用の洗い場もあり、シャワーからは湯が出せます。その横には大型のドライヤーもあるので、大型犬でも乾かせますね 」
家の作り全てが、犬を飼う前提だった為に、庭にある柵の高さなどを確認すれば決めた
「 此処にします。一括で払うので下さい 」
「 あ、ありがとうございます! 」
もし、アルバスを飼えなくても
似たようなシェパードでも飼えばいい
そう思って、家を買うことを決めた
元々ある家具の一部は無償で撤去してもらい、お気に入りのソファなどはマンションから持ってきた
全てが終わる頃には、一ヶ月もかからず移動し終え
俺は、夜になり戸締まりを終えた頃にやって来たアルバスへといつものようにジャーキーを与えては、鞄から買ってきた物を取り出す
「 アルバス…。俺と一緒に生活はしないか? 」
首輪を取り出せば、ジャーキーを食べ終えてからそっと近付き、首輪の匂いを嗅いでは嫌がる様子無く立ち止まる
「 いいんですね?…連れて帰るよ 」
そっと首輪を取り付け、金具にベルトを通せば、リードを付け軽く持つ
「 君はやっぱり賢いな。ほら、行こう。アルバス 」
歩く俺に、嫌がることも無く横を着いてくるアルバスは何処かこれを待ってるように思えた
事前にビニールシートを敷いていた車のトランクへと乗せれば、そのまま家に帰る
部屋に連れて入るのは嫌だった為に、中庭にある洗い場に連れていき、スーツを脱ぎ、カッターシャツの袖を捲りあげては寒い冬の外で、温かい湯を出し続けて洗っていく
「 汚いなぁ…。毛玉も多いし…。でもすぐに綺麗になるさ 」
明かりをつけてるから汚ない水が排水口へと、抜け毛共に流れてるのは分かるが、其れでも綺麗に洗っていく
事前に犬の洗い方を調べてた為に、しっかりと泡で包むように洗い、顔周りは指で綺麗にする
案外、耳や尻周りは綺麗だった為に病気も無さそうだ
「 もう少し待っててな… 」
少し濡れたままの方が毛玉が取れやすい為に、犬用のハサミでカットすればシャワーで流してから、スッキリされる
最後にトリートメントをしっかりとし、湯で流してから、大型のドライヤーで乾かす
それだと時間がかかる為にバスタオルを数枚使い、水気を取るように拭けば汚かったか身体は真っ白になる
「 アルバス。綺麗じゃないか…見違えたよ 」
本当に十歳なのか?って思うぐらいの毛並みの良さと、しっかりとした体格に疑問になるが、その分綺麗で格好いいからいいのだろう
バスタオルはゴミ箱に捨て、その場は明日にでも綺麗にしようと思ってから、部屋に戻り暖房の効いたリビングで最後の仕上げとなるブラッシングをしていく
小さめな耳も、冬毛の為にふっさりとした白い毛も全て丁寧に梳かせば、其処には動画で見るようなホッキョクオオカミがおすわりしていた
「 やっぱり、お前狼だろ…?こんな綺麗で、格好いい犬は他にはいないからな… 」
頬に触れ、そのまま良い匂いがする首元に擦り寄れば、アルバスは耳やら首元を舐めてきた
「 ふはっ…擽ったいって。嗚呼…俺がお風呂に入って上がってからご飯にしよう。少し待っててくれ 」
軽く撫でては立ち上がり、冷えた身体を温めようと風呂に行き、それが終われば夕食にする
何をどのくらい食べるか分からなかったから、取り敢えずステンレス製の鍋に、ドックフードを大量にいれ、犬缶を追加した後に混ぜれば、床へ置いてみる
アルバスはゆっくりと立ち上がり、鍋へと顔を向ければ匂いを嗅いだ後に食べ始めたから安心する
「 それが終わったら牛肉な。知り合いの犬好きの社長が、狼犬を三頭飼っててな。牛肉が好きだと言ってたから買ってきてたんだ 」
ものの数分で鍋に入ってたドックフードが空になったのは驚いたが、六キロの牛肉のブロックを鍋に入れれば、アルバスはそれを外に出して、片足で踏み付けては食べていく
「 食べれそうだな。良かった 」
切った方が良かったか?と思うが、この動物園で見た迫力を経験したかったから、このやり方にした
「 犬を飼ったことないから、よく分からないけど…よろしくな、アルバス 」
アルバスは肉を食いながら密かに尻尾を左右に振り、返事をしたように見えた
コイツが元の飼い主を諦めたなら、
俺はコイツが死ぬまで飼い主でいてやろうと思う
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