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「リサさんか?」
「そうです!──お元気でしたか?」
久しぶりに聞く、何度も私を心配してくれた紳士の声は異国の地で、ここまで私を安心させてくれた。エレベーターへ向かいながらも、スマホを握る力は強くなってる。
「……本当に申し訳ない、テヒョンがあんな行動をしてしまって……」
「大丈夫です、彼は私を守るために自分の気持ちを殺して、ああいう行動をとった訳だから。落ち着いた今は私も流石に理解出来ますよ。」
「さすがアイツよりも大人だ、──だけど今のアイツはもうダメだよ」
「ダメとは?」
「何をするにしても、やる気が入っていない様に見える。この間、テレビの生放送に出てたけどあまりに笑顔が無いせいでネットのトップニュースになってたんだ。噂を聞いても、やっぱりドコか気が抜けた様な生活をしてるらしい」
「──あの人、一人では何も出来ないですもん」
「ははっ、家事とか仕事とかそういう事を言ってるんじゃないよ。そうじゃない。だけど……君を守るために働いて、動き回っていた自分が今は居ない。その生活のギャップに苦しんでいるんだと思う」
乗り込んだエレベーターは速度が速い。テヒョンのマンション並だ。高層ビルやマンションで、エレベーターが遅かったらそれはそれでイライラするしこれ位が丁度良いんだけど。
「守るものが無いと男はダメになるアイツはそれを失うまで分かっていなかったか──分かっていたけど、君を守る事を優先したのか」
「……。そこは私、分かりません。テヒョンしかきっと分からないと思う」
「ああ。そうだろうな──」
チーンという機械音が鳴った。鏡にも成る高級そうな扉が開いた時……聞き慣れた声と私の声が漫画の如くキレイに被った。
「………oh my god…」
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