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「よく見て」と佐久間が俺を抱えて壁際に寄っていく。
よく見ればそれは手作りっぽい何か。触ってみればざらつくそれはどこかで触った事のある感触。俺の経験値が嘘をついてなければ、ダンボール。
「はぁりぃぼぉてぇ」
その場で蹲って泣きたい。じ、じゃああのポタポタ落ちている水滴は?川の下とか?いや待て、西中学校といえば山の中にあって通学が大変だと有名じゃなかったか?
そう思って水滴が滴ってる所の上を見上げれば、ビニール製だと思われる透明なチューブが。
くっ・・・くだらない。死ぬほどくだらない。
「なんでこんな事・・・」
「なんかねぇ、俺の弟がオタクだと思ってるらしくてさぁ。懐柔するためなんじゃないかなぁ」
三度俺は蹲って泣いた。バカだ。死ぬほどバカだ。
そんな奴らに拉致られた俺って・・・。
「ま、とにかく今回の件は勘違いしたコイツらの暴走って事でケリをつけるから。もちろんお前にも何かしらの謝罪をさせる」
いやもういいです構わないでくださいお願いだからもう関わらないで。
蹲っていた俺はさっさと帰ろう、とにかく風呂に入りたいと立ち上がった。・・・はずだった。
想定外の出来事に腰が抜けたようで、立ち上がる事が出来なかった。情けない。たったこれだけの事で、と思うが抜けたもんはどうしようもない。
佐久間がそんな俺を見て仕方がないなと言うような呆れた顔をして、それから少し笑った。ほんのちょっと、その顔が可愛いなと思ったのは気のせいだと思う。
「しょうがねぇなぁ。ほら、乗れ」
俺に背中を見せて片膝をつく佐久間の背中はなんか・・・。
「あっ、当たり前だ。お前らの組織のせいなんだから、ちゃんと家まで送り届けろ」
きっと真っ赤になった顔は見られてない。だって佐久間は俺の方はちっとも見てないから。
その事実に喜んでいいのかガッカリした方がいいのかよくわらかないまま、俺は佐久間の背中に体重を預けた。
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