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異世界だからといって、働かなくていいわけじゃない。
ルリは今日の仕事を終えて、疲れた体を引きずるようにして家に戻った。
「ただいまぁ……」
声にまで疲労が滲んでいる。
しかし、ルリを迎える声は明るかった。
「おかりなさーい」
「おかりなさい!」
小さな妖精たちがルリを迎える。
それと同時にいい匂いがしてきた。
「今日は何かな」
「鳥のシチューなの!」
「緑の野菜とふわふわ卵なの!」
「パンも焼いたの!」
ルリが席に座ると、小さな妖精たちが魔法でテーブルに料理を運び始めた。
元の世界風に言うなら、鳥のクリームシチューと、野菜のオムレツという感じだ。
他にもこちらの世界の漬け物やフルーツが並ぶ。
ルリがこの世界に来て一番良かったのが、この『お料理妖精』の存在だ。
初めて見た時は驚いたけれど、本当に雇って良かったと疲れて帰宅するたびに思っている。
「食べよう!」
「食べましょう!」
お料理妖精は作るだけでなく、一緒に食べていく。
ルリはうんうんとうなずき、スプーンを手に取った。
「それではいただきます」
「いただきます!」
お料理妖精たちはルリと一緒にご飯を食べ、今日、異世界の仕事場で何があったのか聞いてくれる。
このひとときがルリの異世界生活で一番楽しい時間だった。
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