金木犀怪談~無実なんです、信じてください!~

2/7
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
   * 「ほんほほん~、ほほ~ん」  平日のオフィスアワーだというのに、雪彦は学生以上おじさん未満のどっちつかずのラフな服装で都心をへろへろと歩いていた。  鼻歌を歌う三十男は端から見たら本気で怪しい存在でしか無いが、本人はご機嫌である。 (有給~、金木犀~、楽しいな~っと)  「金木犀学校休むほど欲しい」のあと、雪彦は大沢さんにさらっとフレグランスのブランド名を聞き出した。  それさえ聞けば、販売店や発売日などは簡単に分かった。なんなら聞かなくても「金木犀 フレグランス」だけで分かったくらい一部女子の間では過熱している品だった。 (有給、余ってるし! その日はあんまり忙しくないし! )  大沢さんは半休と言っていたが、雪彦はせっかくなので一日有給休暇を取った。  二人同時に休んだからといって、困る部署でも怪しまれる部署でもない。大沢さんには怪しまれたかもしれないが、同士と思われる位だろうから、困らない。 (まなに連絡して届けちゃおうかな~っと……ん?)  そろそろ目的地の取り扱い店の店頭が見える頃。  だらだら歩いていた雪彦の目に、謎の光景が映し出された。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!