勇者よりも大切な人

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 カラン。乾いた音がした。  (ひざ)をつく屈強(くっきょう)な男。その喉元(のどもと)には、刃を(つぶ)した試合用の剣が突きつけられている。  彼が持っていたはずの剣は、少し離れたところに転がっていた。  対戦相手だった相手には目もくれず、一人の男が堂々と立っている。 「二回戦第五試合。勝者は前回王者、ライ!」  審判(しんぱん)が叫ぶ。  一瞬の静寂。直後にわきあがったのは、歓声(かんせい)ではなく、ブーイングの嵐だ。  手の(こう)で乱暴に汗をぬぐったライは、後ろを振り返ることもなく、会場を後にした。  誰の評価も気にしないその背中。  それがどこか寂しそうに見えるのは、きっと私の気のせいか、願望なのだ。
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