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順調に勝ち上がって、いよいよ決勝戦。
手に汗を握りながら、観客席からライを見つめる。
張りつめた空気感が、ここまで伝わってくる。細かい表情が読み取れないほど、遠く離れているのに。
あぁ、神様。どうかライをお守りください。勝敗なんてどうだって構わないから、怪我だけはしないで。
ライが一気にしかける。流れるような攻撃。相手は対応するのに精いっぱいだ。
3回の大会にわたって頂点を極めるライの実力は伊達ではない。
そう、そのまま、あと少し。
そこから、何が起こったのか、私の目では捉えることができなかった。
会場のどよめき。膝を折った男。その横で高らかに剣を空に突き上げ、咆哮したのは、ライではない、知らない男だった。
茫然としながらも、認めないわけにはいかない。ライは、負けたのだ。
こうなって初めて、私は勝敗に興味がないと思っていながら、実はライの勝利を疑っていなかったことに気づかされた。
膝をついたライは、別人のように小さく、頼りなく見えた。
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