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第十七話「グローバル?な問い合わせ「パクられた)」
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便利屋の広報担当係としてはホームページの管理も行わなければならない。
だから「どこから見に来た」「どんな検索語で見に来た」等のアクセス解析も時々行う。
ホームページを開設してから半年ほどたって、少し変わったワードで検索される事が多くなった。
「便利屋・開業・必要・道具」
「便利や・スキル」
「何でも屋・ノウハウ」
「便利屋の収入はどれぐらい」
などだ。
近くの便利屋探しなら
「○○市・便利屋」
とか、あるいは引っ越しなら
「なんでも屋・引っ越し・住所・料金・安い」
とかで検索するはずだ。
前者はどうやら素人さん?の検索ではないだろう。
便利屋を開業しようとたくらんでいる人や会社からのアクセスの様だ。
――――――
その日も大将は本業のリフォームが忙しいため、僕が転送電話を受けていた。
ほーら、ベルが鳴った!問い合わせだ。
「実は地元の茨城の○○で便利屋をはじめようと思ってるんですが」
「はあ」
「本業は電気屋なんですが、このご時世……」
「確かに今どき、町の電気屋さんは厳しいでしょうねえ」
電話の声からしてかなり年配らしい。
身の上話を聞くと、たいそう困っている様子だ。
厳しい現状の話が終わって、言いにくそうに
「チラシを作ってもらえますか?」
「チラシ?」
「いろいろ手書きでチラシを作って見たんですが、どうもイイのが出来なくて」
よしよし、チラシ作りは僕のお得意だ。
――――――
「便利屋さんのホームページをいくつか見たのですが、おたくのデザインが群を抜いて素晴らしかったもので」
「おっほん!いいですよ。そんな事情ならお安くお請けさせていただきますから」
「ああ、ありがとうございます。本来なら商売ガタキなのに申し訳ありません」
はるか遠い茨城県ならバッティングする事もない。
お年寄りの電気屋さんが僕に平身低頭している姿が見えてきた。
エッヘン、一丁、お年寄りの役に立ってやるか!
「ちなみにどんなチラシが出来るでしょうか?」
電気屋なので歳はいっているが、ある程度ならパソコンは使えると言う。
「そうですね、じゃ、今まで作ったチラシの見本、データで送りましょうか」
「……そうしていただければ助かります」
僕はこれまで作った便利屋のチラシの中から出来のいい物を数枚、早速送信した。
茨木の電気屋さんは、何度も何度もお礼を言って電話を切った。
――――――
どのデザインを選ぶんだろうな……。
『こんなオシャレなチラシがこの町でウケルじゃろうか』
おじいさんが嬉しそうに僕の作ったチラシをプリントアウトして眺めている姿を想像する。
が、返事がない。
……
夜まで待ったが、ない。
……
次の日もない。
……
その次の日もない。
年寄りだから、レスポンスが遅いのかなあ……。
3日たって、はたと気が付いた。
3日前のアクセス解析を見た。
あった。
<ホストの都道府県>
「茨木」
そして
<検索キーワード>
「便利屋・チラシ・騙されやすい」
しまった!パクられた!!!!
<おまけ>
おまけによくよく思い出すと「フリーダイヤル(料金こっちもち)」だった。
くっそ~!!!
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