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第三話「防犯カメラ付けて!」(大将の勘はよく当たる)
「大将、防犯カメラの設置とかも出来ますか?」
「ああ、本業で何回でも付けた事あるで」
「さっき、そんな問い合わせがありました」
「豪邸か?」
「いいえ、普通のアパートだそうです」
「やめとこ、やっかいな事になるに決まっとる」
「でも、仕事を選り好み……」
「ほな、なわないはん、あんた自分の家に防犯カメラ付けよ思た事あるか?」
「まあ、大した家じゃないので別にそこまで……。でも、電話の人、お金はちゃんと払うと言ってますよ」
「そんな話やない。あかん、やめとこ」
「もったいない……」
……大将の勘は良く当たる……。
それは大将と二人で便利屋を初めて間もない頃の話。
電話取次係の僕としては一本一本の電話がとても大切。
なのにあっさり断るのは……。
どうしても未練があって「なぜ防犯カメラを付けるか」を聞いてみた。
では、行きます。
その前にもう一度。
……大将の勘は良く当たる……。
「どうして防犯カメラが必要なんですか?」
「聞いてくれるぅ。最初は自転車のタイヤ、パンクさせられたの。その次は、その自転車燃やされたのよ、信じられる!」
「げっ。それって放火じゃないですか!」
「それだけじゃないのよ、ウチのポストにね、いっぱいゴミも入れるのよ。それだけじゃないわよ!!このあいだなんか、さあ家を出ましょとドア開けたと思ったらドア開かないのよ」
「……」
「おかしいなっ思って思い切りドア押したら、ガムテープ貼ってあって、ドア開かないようされてたわけ……」
「そりゃひどい!相手のメボシは付いてるんですか?」
「モチ」
「近所の人ですか?」
「しーっ」
「……」
「と・な・り」(ひそひそ声)
「隣?」
「そう、隣の○○。右隣りの○○。ドアの音で出入りするのが分かるじゃない、悪さの後、いつも隣のドアの音がする」
「…………」
「だからワタシもね、こないだは仕返しにゴミ集めて、○○の家の前に……」
「…………」
「それだけじゃケッタクソ悪いじゃない、ゴミの中に……」
「…………」
空恐ろしくなって、途中で電話を切った。
もう一回言います。
……大将の勘は良く当たる……。
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