第八話「電気の傘の取替え」

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第八話「電気の傘の取替え」

 ひょんな事からリフォーム屋の大将と二人で始めた便利屋さん。  広報担当の僕は、当初、何をやっていいか分からないので、まずはチラシを作ってみた。  そして、テスト的にいろんな地域にまいてみた。  いわゆる富裕層と言われる人が住んでいる地域から下町まで。  大将はチラシの効果を心待ちにしていた。 「なあ、なわないはん。山の手の金持ちからバンバン仕事が入ったら大儲けやで!」  結果は違った。  問い合わせは、ほぼ100%下町。  それも、一軒家ではなく市営住宅などの集合住宅に住んでいる人たちからの電話がほとんどだった。 「なるほどなあ、金持ちはケチなんやなあ」  大将の落胆ぶりは、なかなかなものだった。  ―――― 「チラシを見たんですが、電気の傘、換えてもらえますか?」とのTELを取った。 「電気の傘って?天井からぶら下がってる?」と僕。 「そう、それが古くなって割れちゃって……」  早速、大将にTEL。 「電気の傘を換えて欲しいそうなんですけど」 「そんなもん、自分で換えたらええやろ」 「ところが、お金払うから来て欲しいって、言ってます」 「何やら怪しいな。なわないはん、念のため、あんたも付いて行ってくれへんか」  ――――  たどり着いた場所は、古い市営住宅だった。 「公営住宅訪問回数記録更新中ですね(笑)」 「……」  大将はご機嫌斜めだ。  チャイムを鳴らしても、だれもなかなか出てこない。  鍵は開いている。中に入った。  ああ、そうだったのか……。  依頼の謎が解けた。  車椅子だ。  ベッドが乱れている。  ベッドの隅っこに座っている住人が僕たちに言う。 「自分で換えようと頑張ったけど、無理だった」  特殊な工具なども使わず、大将がものの数分、いや数秒で付け替えた。  僕は、こっそりと大将に耳打ちした。 「これって、お金、もらってもいいもんでしょうか?」  すると大将が毅然とした態度でこう言った。 「あほっ、これはなあ、商売、ビジネスなんや。変な同情なんかしたらあかん」 「ああ、そう、そうですね」  ちょっと厳し過ぎる気もしたが、確かに大将の言う通りでもある。  が、大将、帰り際 「おっさん、電球切れたらどないしとるんや?」 「……」 「大きいゴミはどないしとるんや?」 「……」  恨めしそうに天を見上げる住人に、大将 「ついででええんやったら来たる。すぐ電話して来い。ほんでからな、ワシらは今日から友達や。そやから次からは友達から金は取るわけにはいかん!わかっとるんかおっさん!!遠慮するな、なあ友達」   ――――  ああ、この大将と一緒に仕事をしてよかった。  と思う反面  この人と組んでいても、絶対に金持ちにはなれないだろう。  そうも思った(笑)。
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