ある夏の青春

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 私はずっと、物語の登場人物に憧れていた。誰もが平凡だと思っていた彼らに、ある日突然試練が与えられる。辛い思いをして、時々泣いて、怒って、それでも耐えて、最後はとびっきりの幸せな結末を迎える。そんな選ばれた人だけが享受(きょうじゅ)できる「特別」。私はそれを漠然(ばくぜん)と夢見ていた。  「特別」な人たちは物語の中だけではなくて、時折現実にもいる。画面の向こうで、私とは別の世界に住んでいるその人たちは、彼らに起こった「特別」を語る。いいなあ。そう思いながらも、「特別」は、私には縁遠いものだと思っていた。  これは私、いや私たちに降りかかった「特別」のお話。
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