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完了の刻
§
灯火管制が敷かれているような、大停電の夜。
遠くを走る夜汽車の汽笛が聞こえる他に、取り立てて音はない。
強いて言えば、自分の心音が聞こえる程度だろうか。
静かすぎて耳が痛くなるほど、という奴だった。
どうしようもなくくだらないことを頭の片隅に焼き付けながら、私はちょっとした逃避行の準備をすべて終えたところだった。
適当に書き殴った置き手紙は、相変わらず私のボロ机の上に置かれている。実際のところやっぱりどこか非現実的で、そしてやっぱりとりとめもなかった。
だけれど、それだからこそ私らしいとさえ思えて、愛おしかった。
愛おしさのあまり、すべて引き裂いてしまいたいくらいだった。
だけれども、やっぱりこのままで良い、間違いなどが入る余地すら無い。
この混沌としたセカイの片隅に置いてあげるのが当然相応しいのだ。
一息ついて壁掛けの時計を見れば、もうすぐ2回目の約束の時間だった。
夜闇がトワイライトに染め直されたその後に、このセカイは――。
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