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毎朝日課の散歩を終え、一息ついて空を見上げる。
昨夜と打って変わった晴天に、白い月が残っていた。
寝苦しい夜は、雷のせいばかりではなかった。
昨日花嫁衣裳を着た彼女は、いつにも増して輝いていた。自らの婚礼の時までポーカーフェイスの新郎の代わりに、客をもてなし良く笑いかけていた。
天気が急に変わるのは、この辺りではよくある。だが彼女の新たな門出を祝う日に相応しくなかった。
まるで将来を暗示するようで…
ため息をつき、項に手をやって首を回した。
…考え過ぎだ。
未だに整理出来ない感情に囚われている自分が嫌になる。初めて彼等が許嫁同士だと知った時の衝撃と動揺は、今も俺の中で燻っていた。
今後気軽に彼女と軽口を叩き合ったり、何気なく触れることは出来ない。
人の目がある。
此処は、そういう土地柄だ。
そんな場所で生涯を過ごす彼女があわれであり、愛おしく感じる俺も又しがらみに縛られている。
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