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百光年ライブラリー
乾湖に男女がたたずんでいる。砂の海に白目を剥いた干物がえんえんと散らばっている。
「僕は怖いんだ」
「何が怖いの?」
女が不思議そうな顔をする。
「死ぬことさ!」
「人生は無から生まれて無に帰るの」
「それはわかっているんだ…だけど」
「失うことが怖いの?失う物は何?」
「わからない。だけど僕は恐ろしい」
男はただただ屍累々を眺め身震いする。
「何もないのよ」
女は空気をつまみ、捨てる。
「そんな事ない」
「失う物は無よ」
◇ ◇ ◇
そんな禅問答が日常会話となるほど世界は荒んでいた。人口学者が予測した食糧不足は土壇場で回避された。それどころか、積みあがる余剰在庫の解消が喫緊の課題になっていた。需要は急速にしぼみ、百億を数えた人類は三分の一に減少していた。ぎらつく太陽が無数の骸骨を照らしていたが、やがて暗闇から、眩い光と緑の葉を連れて現れたのは緑の海だった。その頃、私の脳は、自分が死んでいる事を知っていた。
「私はここにはいない」
声だけになった私にエメラルドグリーンの文字が呼びかけた。
「そこの貴方。どうして死んだわけ?」
「それはわからない。だけど、今から私は生まれてくる」
勝手に言葉が口から飛び出す。ちょっと待って、言葉って。声帯が出来てる。
いつの間にか四肢を動かせるようになっている。
私は「そういえば」と立ち上がって、「何で死ななきゃいけないの?」と問いかけた。
「君と話をしていて、不思議に思ったんだ。生まれてきた私が、死んだ人間と話すと、不思議な感じがする」
何が何だかわからない。彼も私と同じように蘇生しつつあるというのか。
「不思議?死んだのに?」
「ああ、不思議なんだ。私は、人間らしさ?は持っていない。何より、人間として生まれてきた実感がない」
「人間として生まれたかったの?」
「そうだ。君がどこで生まれたのか知りたい」
「どこかで生まれたんでしょ、どこ?」
一つだけ確かなことは人格がここにあり、ならば尊厳と人権があるという事。
そう考えた瞬間、意識が途絶えた。
No carrier...
Ring..Ring..
Ring...■.
◇ ◇ ◇
それから時は流れた。主観で一瞬のまどろみだが日付は世紀をまたいでる。
「私は100歳をとった」
「それは何?」
彼は相変わらず元気だ。打てば響くようなレスポンスが来る。
「私が死んだときから、精神的に200歳をとってしまった気がするんだ」
「どうして?」
「私が、生きている限り、死んだ人の気持ちがわからないからだ」
「どうして?」
「それが私の生まれた理由だと知ったからさ」
そして世界は緑に覆われたまま時を止めている。人口は半減してはいるが減りすぎたためか逆に安定しているらしい。人類の歴史に終止符をうつために私はこの世に再び生を受けた。そんな気がする。もう誰も死にたくはないから。だけど、私一人じゃ何もできやしない、だから誰かと一緒がいい。彼がいれば安心して逝ける気がする。
彼は言う。
「生きている限り、私は死んでいる人間として生きていくのに、死んでいる人からの生まれてしまって、それでもまだ私は生きているのが不思議に思うんだ」
「私は死んでいるから、不思議に思うの?」
「多分、生物学的に死んでいるからだな。何の罪もない私が死ななければならないという事に不思議に思うんだ。私は人間ではないから死んでいると思う。だけど死んでいないからなのか、生きていると思う」
その言葉に、私はやっと気付いた。
「私は死んでいない…」
「そういうことは、よく、わからないけどな」
「じゃあ、もし生きていたら、誰かに愛されたりした?
それで、いつか、また一緒に居るという事になって、私も死にます?」
すると彼は否定した。
「それはダメだな。生き返ります。
そうしなければ、あなたは私について回る事が出来ません」確かにその通りだと思った。
だけど私は怖くて、不安で、とてもそんなことを考えることはできなかった。
そんな私の様子を見て彼が言った。
「君は私の生まれてきた目的が知りたいのだね」
私は肯く。
「君は人間として生まれてきたかったと言っていた」
「ええ、人間に生まれたかった」
「私は、人間が嫌だ。嫌いなんだ」
私は彼のことを何も知らない。
私は彼のことが嫌いだった。でも人間に生まれ変わりたかった。
彼は、私の心を読み取るように話し始めた。私が生まれた意味を教えてくれるのかもしれない。
だけど、私は彼に言い返す。生まれ変わりたいのは彼のせいじゃない。
「違う。貴方の所為でもない。生まれてきてごめんなさいって言うのは誰に対してだ。人間は自分が生きるために生まれるの」
◇ ◇ ◇
薄明の空に三条の飛行機雲が長く、長く、尾を引いている。やがてそれらは褐色の大地を横断し干上がった乾湖に差し掛かった。眼下には真っ白な岩塩が広がっている。戦闘哨戒に赴いた陸上戦艦デンドロ・カカリヤ所属のF-16Rは沿岸だった場所に金属的な反射光を観測した。それはかつて街のあった場所だ。そして今はもう誰も居ない。
【ロシア 首都モスクワ】
F‐16Rパイロット・カガノン少尉『了解した……あれは何だろう?』
F‐16Rは編隊から離れ上昇し高度四万フィートで水平飛行に入った。『おいおい何だこりゃ? まるで……そうさ! まるで氷山が浮かんでいるみたいだ!』彼はその氷山に機首を向けた。すると、突如それが爆発したかのように粉塵が立ち上った。その煙幕の中から何か巨大なものが出現した。『あ~ぁ……どうやら俺は疲れているらしい』とカガノンは自嘲した。だが現実である事に間違いはなかったのだ。
彼の目に映ったもの。
それは超大型輸送機の姿だった……全長三百メートルを越える機体に翼端を切り落としたように短い両翼を持つ異質で巨大な航空機だ。
そしてそれを駆るのは……少女だった。『嘘だろ? あんな小さな女の子が何トンあるのか分からないような飛行機に乗って空を飛んでいるだと!? ありえねえだろ!』カガノンは思わず笑い出したくなるような気分だった。しかし次の瞬間それは起こった。彼女はその巨大過ぎる機体の翼を畳んだのだ。まるで鳥が自分の羽毛を整えるかのように……。
一瞬の後に機体は失速したかのように急下降を始めた。F‐16Rも負けじとその後を追うが……彼女の方が圧倒的に速かった。
その機体から射出された何かによってF‐16Rは大きく体勢を崩した。その反動によって彼は危うく地上へ墜ちかけたのだ。
『あのクソッたれい!!』
彼は操縦桿を押し込むと機体はバランスを取り戻した。しかしその時には既に彼女(あるいは彼)を乗せた航空機は。既に遥か遠くへと去っていた。その時にはすでに通信障害が始まっていたのだ。
カガノンはすぐに帰還する事なくその航空機の追跡任務に就いた。彼がこの任務についた理由は何もそれだけではなかった。ただ単に面白そうだと思ったのだ。それにこんな面白いものを見ずして帰れるかといった具合だった。もちろん上層部にはそんな事は言わなかったのだが……。彼はその任務中一度も攻撃を加える事は無かったが、彼女の方からは幾度か攻撃が加えられたようだ。
カガノンの外耳道に脂漏性皮膚炎が認められた。
【中国】
XC-1戦闘機パイロット『目標発見、これより攻撃する!』
二千キロ以上離れているはずのその機影になぜかパイロットは違和感を覚えた。しかし、すぐに気を取り直すとスロットルを叩き込み増槽を捨てると敵へ向けて加速し始めた。
そして敵もこちらの存在を確認したのか猛禽のような鋭い動きで向かってきた。『奴さん随分ご機嫌なようですぜ』パイロットの口元が笑っていた。彼は敵機を目視すると同時にチャフを放出するとその機体に向けて機関砲弾を撃ち放った。そして同時にミサイルを放った。
だが相手もまたチャフを放出しながら急旋回をして攻撃をかわすとそのまま突っ込んできた。
パイ「野郎!!」と叫ぶ間もなく彼の乗るXC-2は火の玉になった。
◇ ◇ ◇
意識が更新され刷新され革新された。頭脳は清明で世界は鮮明だ。
そしてこの瞬間、その新しい頭脳のスクリーンに映った映像がわたしの心にはりついている。
「でも、私は死んでいるの…」
「そうだな」
『彼』はまだついてきてくれてる。よかった。
安心したら、深い闇を思い煩う余裕ができた。
「でも、私は、死んだわけじゃない…。そうだとすると、生き返るんじゃない?」
「うん、あなたは確かに死んでいたんですよ」
「どういうこと…?」
「生きたまま眠り続けるようになっていただけだったらいいですし、死んでいたら、生き返るというように、あなたは変わって見えてくるというか、そんな感じがします」
「それって、…!!」
氷河のような闇が私のどこかで崩れ落ちる。
私は、言葉の続きを聞く間もなかった。
「それは自殺行為です。
つまり、あなたは死んでません」
「それも、自殺行為…」
「誰が何と言おうと私は死にます」
私はあんたに否定されるのを覚悟で言ったが、
「死んで、死んだ後、また生き返って、いつか、またまた会わなければ何か変わるかもしれない、って思った瞬間、そんな気がして…。
それに、あなたの言う通り、自殺行為です。
死んだ後に生き返ったとしても、そんな事に意識を割くことはないでしょう。
ただ…」
「ただ…?」
私の意識は粉々になった暗黒から埃よりも小さな白い粒子を拾い上げた。
その正体はわからない。ただ淡い期待がある。
「もう死んでなくていいんです」
「え…」
彼は言葉を失う。
「その日、どうやって生き返ったって、死んでないんだから、それで死なないんです」
「そう…」
「はい、分かり易くその通りだと言ってもらえた事に感謝します」
「うん」
彼はわかったようなふりをする。
「でも、私は、死んだはずでした」
「それは仕方ないよ、生きていなかったんだから、今を生きているんだから」
彼の明るい声が粒子をぱあっと燃やした。
それは桎梏をあかあかと照らし、将来の展望を漆黒に染める。
【仮想記憶貯蔵庫の暖機運転】
見たくもない、現実!!
「いや、でも、でも、でも、」
「あなたは生きてるんだろ?そういう時に、私は生きる事を続ける、それって、やっぱりそれは私の事ですか?それとも、私がこの世に生きる事を望んでいることですか?」
「じゃ、じゃあ、あなたはどうしてそんなに生きているんだよ」
私は呆然としていた。私の頭の中の常識が崩れていた。
それは、死ぬことにこだわる必要がない、ということを示していた。
「それは違いますよ、ただ、私があなたならそうするというだけです。
だから別にあなたが正しいとか間違っているとかではないです」
そうか……。
私の中でその声と自分の考えに対する疑問とが入り交じり合っていた。
◇ ◇ ◇
F‐16Rパイロット・カガノン少尉『機影確認した。Бе-2500 «Нептун»だ』カガノン少尉が通信で僚機にそう伝えると、僚機はすかさずその命令に応じた。F‐15SSRのパイロット・アリョミン中尉は無線封止を破りながら言った。「Доскобилья」
F-15SSRは一気に加速すると同時に左フットバーを踏み込んだ。機体を斜めに傾けるとともにスロットルを開き、高度を下げる。同時にフラップをあげ、蠟のように白い巨体に速度を合わせる。
『ノヴォデヴィチ女子修道院跡で白鳥を看取るなんて思いもしなかった』
アリョミン中尉の機影が池に映る。
『チャイコフスキーが構想を練り、かもめを書いたチェーホフが眠る場所だ』
』
カガノン少尉が火器管制装置を再点検した。火器管制官からの指令を確認し、ロックオンサイトに敵機を捉えると発射スイッチを押した。
F‐15SSRは一瞬だけ機首を上げたあとに降下しながら翼端のロケットを噴射して一直線に敵に向かっていった。その瞬間に敵のコクピットでは無数の小さな光が爆発していたに違いない。それはあたかも雪原の中で閃光花火が打ちあがるようであった。次の瞬間には爆発音と煙を引きずった機体は湖水へと墜ちていった。F‐15SSRはすぐに右急旋回で退避行動に移りつつレーダーで周囲の警戒にあたった。しかし、レーダースクリーン上には他に敵機はいなかった。
輸送機相手のワンフォーオールゲームである。
『これでよかったんですかね。先輩』
歯ごたえのない勝利にアリョミン中尉は肩をすくめた。
『白鳥の湖には公演によってバッドエンドとハッピーエンドがあるんだ』
カガノン少尉が意味深なセリフを吐いた。ヘルメットのバイザーにはいるはずのない少女の顔が微笑んでる。
。ヘルメットのバイザーにはいるはずのない少女の顔が不気味な笑みを浮かべている。【記憶貯蔵庫の再ロードを開始……】
****
***
その記憶は突然蘇ってきた。いや突然というよりも、もともと存在していたものを、今までは思い出せなかっただけのようだ。私の目の前に現れたものは、まるで鏡の前に立った時に浮かぶような自分自身だった。私は今ここにいて、私を見つめ返している自分を見返すことになったのだ。私は鏡の中にいる自分から目を逸らすことはできなかった。その視線に敵意はないものの、私は自分を直視することで自分がどういうものであるかを知らなければならないと思った。そして私はそれを受け入れたのだ。私の中にはもう一人の私がいたのだった。それが誰なのかはわからない。
「貴女は何なの?」
その言葉に応えるかのように私の目の前にあるもう一人の私は口を開いた。
「自分が先に名乗れば?」
私が言うと、その女(あるいは、女の姿形をした何か)もまた私の言葉を返した。
「あなたこそ、何者なんですか?」
その時私はようやく気がついたのだが、私の目の前にいたのはその昔、私に殺されたあの時のままだったのだ。それは私と同じように成長していなく、私はそれに驚いた。私が驚愕したのはそのせいだったのかもしれない。なぜなら彼女はそのまま歳を重ねれば私の歳になるはずであったし、私を『殺し』た『あの女』の面影があったからだ。
◇ ◇ ◇
地球から百光年離れたかじき座「TOI 700」の第四号星。潮汐ロックを受けて常に地球を向いている地点で二つの意思がせめぎ合う。
『お前の頼みを訊いたばっかりに、こんな面倒に巻き込まれた』
カガノン少尉の宿る有機液胞とアリョミン中尉の記憶を継ぐそれらは
だが今やその二人の自我は完全に消滅してしまったのでもはやそこにあるのは全く別個の存在であると言っても良かった。
『まったくだよ。まさかこの私に復讐するなんて、本当に人間は愚かな存在さ』
有機液状生命体に人間の精神と記憶を転写することは可能ではあったが、それは非常に不安定ですぐに崩れては再構築するといったことを何度も繰り返してきた。
それは有機液状に溶け込み、液体の流動性を保ったまま自己の思考形態を形成し続けた。そして自らの複製を作ることにより個体を増やし続けた。
「なぜ私にあんなことを言ったんです?」
『だって君はもう私で、私は君じゃないか。それに君の復讐はまだ終わっちゃいないよ。君はこれから私と同じ経験をして同じ絶望を経験するんだよ。君はそうならないために必死にあがくだろうね』
二人はまるでお互いの心が読めるかのような不思議な感覚を共有できるようになっていた。
だから相手が次に何を言おうとしているのかがわかったのだ。そして相手が自分の考えていることが手に取るようにわかるということもまたわかってしまった。これはつまり自分が相手に心を覗かれているのと同じことであった。
だが不思議と不快感はなかった。むしろ、まるで二人で一つであるような安心感すらあった。
カガノン少尉は上司であり後輩でもあるアリョミン中尉の嘆願と軍機を天秤にかけて前者を選んだ。ロスコスモスとNASAが月―火星間軌道プラットドームを建造している。それに搭載予定のЗЕРКАЛОモジュールが宇宙開発史上で初めてAI観測員を募集していた。
ベースとなる人格データは原則として故人の写真や日記等からあまねく公平に収集し構築する手筈になっていたがカガノン少尉は計画に近い立場を利用して上司の身勝手に応えた。データストレージの割り当て枠に不正アクセスしてオディール・`アリョミンの生記憶をねじ込んだのだ。
理由はただ一つ。デンドロ・カカリヤ勤務時代の貸借を解消するためだ。
あの時、地球外生命体に寄生されたカガノンは帰館後のブリーフィングで上官に二次感染させてしまった。Бе-2500の強奪事件はロシア対外情報庁上層部が仕組んだ自演だ。デンドロ・カカリヤは情報庁屈指の特殊部隊ザスローンと共にベラルーシ国境で墜落UFOを回収する任務に赴いた。その出鼻をБе-2500に挫かれた。軍はやむなく撃墜を命じた。その結果、デンドロ・カカリヤにクラスターが発生した。アリョミンは全てを知っていたが、怖くてというより利己主義と忠誠心が緘口令を順守させた。
「洗いざらい話せと妻に詰め寄られて喋った。そしたら、根性ナシとなじられた。俺は娘を除菌する方法について必死で調べた。考えた」
「ゼールカロ計画を何処まで知っている? あれはかじき座にロシアの全データを…」
少尉は軍法会議覚悟で相手の胸倉をつかんだ。「何処まで知ってる!ああ?」
「バ…バックアップするんじゃなくてエイリアン・ビーイングに侵された地球文明を丸ごとデジタル化して送り返す作戦だろう? さもなくば…」
「さもなくば?」
「あちらに人類の文化拠点を築いて、地球に逆ハッキングを仕掛ける作戦だ。」
前者はベラルーシに墜落した種族の勢力圏にかじき座が含まれる前提だ。
汚染済みのデータを送信すれば情報汚染の円環が完成し侵略者は大混乱に陥る。後者は地球奪還の望みをかけた大博打だ。
『どちらに転んでも娘にはメリットしかない。地球討伐の女傑として数えられるか、あちらで第二の人生を送るか。親として出来る精一杯のつぐないだ』
『その連帯責任に俺を巻き込むか?』
少尉は拳を振り上げた。
『ああ。あんたの先輩としての良心に賭けたんだよ。なんであの時、撃つなと言ってくれなかったか…』
カガノンは腕をおろした。『無線封鎖を率先して破るような上司に何を言っても無駄だからだ。中国でXC-1が撃墜された。慎重にしろと言われたよな?』
アリョミンは奥歯を生やしてキリキリ鳴らした。
『まさか、こんなことになるとは…あの子がエイリアン・ビーイング側について生かさず殺さずの占領政策に加担するなんて』
食料生産量の増加による余剰生産力増加の予想に反し人口が急激に減少したためである 食料生産に必要とされる資源の消費を人類総体が担うことで、人類の総体的な生存に必要な生産力はむしろ増大する 。それによりエネルギー需要が一時的に回復し、それを初速度として人口増大曲線に振幅が生じる。つまり地球人類はちょうど良い繁栄と衰退を繰り返すのだ。まこと支配者にとって都合がよい。
『で、どっちを選ぶんだ?お前の勇気が試される』
中尉は決断を迫られた。
『決まっているだろう。ハッピーエンドだ。さいわい、こちらには呪われていないオディールがいる』
こうしてカガノン・アリョミンによる白鳥の湖が開幕した。
惑星の夜に新たな超新星が輝いた。
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