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『アリス、アリス』
幼い頃から、わたしに呼びかける声があった。
若い女性のように聞こえる声。
それがわたしにしか聞こえないのだとわかったのは、わたしが何度も声のことを両親に訴えて、嫌そうな顔をした両親が、『神殿』にわたしを預けた時だった。
面倒な荷物が降りたかのように早足で去ってゆく両親の背中を、『神殿』の神官と手を繋ぎながら、わたしは見送り。
自分は両親に見捨てられたのだと、ぼんやりと理解した。
『アリス』
『神殿』の人達はわたしをそう呼んだ。わたしにはほんとうは別の名前があったけれど、両親に捨てられた今、その名前を持っていても仕方ないと思って、アリスと呼ばれることを受け入れた。
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