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「こんちはー、どれいサービスです!」
その爽やかな声は、インターホンの向こう側から聞こえてきた。
時刻は、20時。休日だというのに、二日酔いのせいか、体がむくんで、だるい。特に外出もせず、かといって、たまりにたまった家事をこなすこともせず。スマホだけを眺めて過ごした時間は、まさに溶けるようだった。
そろそろお風呂に入って、ストレッチをして寝よう。
実花がそう思った時、その音は響いたのだ。
防犯のために最近設置したばかりの、インターホンのカメラからの映像には、一人の男が映っている。
「実花さんのお宅ですよね!」
実花よりは年上だろう。白のパーカーを着た、柔軟剤のCMに出てくる芸能人のような男性。
随分と、爽やかで、正統派のイケメンだ。
そう思えば、すぐさまこの扉を開けてやらなければならないという気持ちになってしまい、実花は、慌てたように、扉を開く。
「はいっ、お待たせしました」
実花はそう告げ、視線を上へとやる。生まれてこの方染めたことがないというような、ふんわりと軽やかで艶やかな黒髪。
それを揺らしながら、男は、ニカリと微笑んだ。
「いくらでも、待ちますよ。今日から、あなたの奴隷ですから」
「へ?」
男の言葉。それに、実花は首を傾げた。あまり日常的に聞きなれない単語が聞こえた気がした。
「どれい、っていいました?」
「はいっ! 掃除・洗濯・料理、様々な作業を代行する、響きの通り、奴隷のようなサービス、気温の℃に数字の0って書いて、℃0サービスです!」
男性はそういうと、またニカリと微笑む。その笑顔は、日が落ちた今の時刻であるからか、余計眩しく感じるほどだ。
実花は、それに圧倒されながらも、おずおずと言葉を紡ぐ。
「いや、えっと……頼んでないですが」
「頼んでますよ。実花さんの印のついた、契約書類もあるし。限定特価プランの前払いだって済んでるし」
「え、」
実花はそこでようやく、昨夜のことを思い出す。
アパートの階段を上りきって、自身の部屋の前へと着いた時、確か、男に声をかけられたのだ。
『ご契約、ありがとうございます。そうしましたら、明日の夜、さっそく、スタッフを向かわせます!』
そんなことを、その男は言った気がする。
ようするに、訪問販売にひっかかってしまったのだ、と、実花はそこでようやく気が付いた。
「す、すみません、クーリングオフします!」
実花は勇気を振り絞って、そう叫ぶ。
昨夜の自分はいくら払った? 確か財布の中の札を何枚か、冴えない男に渡した気がする。自身の財布の中身なんて、たかが知れており、取り返しがつかないような金額ではないだろう。
しかし、無料で他人にくれてやる札は一枚足りともないのだ。
「クーリングオフですか? そりゃ、出来ると思いますけど、いや、でも、困ったなぁ」
男は実花の言葉を聞き、自身の首後ろへと手を添える。
そして、眉根を寄せ、シュンっと肩を落として見せた。
「このまま、帰ったら、俺が怒られるかも。ていうか、クビ?」
「え、」
「あー……せめて、今回だけ……お試しだけでもしてくれたらなぁ……」
それはわざとらしいほどに、情に訴えかけるような態度だった。
顔のいい男の落ち込む様は、まさに、捨てられた子犬をみるようで。
いやそうではなくても、彼女はもとより、『断る』という行為が苦手であるのだ。
「ッ、わ、わかりました……少し、だけなら、」
「ほんっと助かります!」
実花の言葉に被せるように、男はそういうと、さきほどまでの表情を、嘘のように明るくさせた。
こんな場所で、『奴隷・奴隷』と叫ばれては困ると、彼女は、自身の部屋へ彼を招く。
ソファーの上に座るよう促すが、彼は頭を振り、冷たいフローリングの上に正座をした。
「えっと、それで、どんなサービスなんですか?」
「さきほどの説明の通り! 俺を奴隷のように扱ってください!」
「ど、奴隷って……」
それがサービスのコンセプトなのだろうが、それはそれで、センスの問題がありそうだ。
「掃除、洗濯、料理なんでもこい! あ、家電直すとかそういうのは、勘弁してくださいね。俺、機械ものと愛称悪いみたいなんで。壊しちゃうかも」
どうやら、彼がいうサービスとは、家政婦のようなもののようだ。
近年、そういった代行サービスは、現在、多種多様のものがある。
料理、ペットの散歩、子どもの送り迎え、宿題まで。
共働きをする家庭がほとんどである世の中で、そういったサービスが金持ちの特権と呼ばれていた時代は終わったのだ。
今の世の中では、気軽に使える、慣れ親しんだものに変わった。
だが、それを、独身のその上、まだ社会人一年目である自分が、まさか、酔った勢いで、申し込んでしまうとは思わなかった。あまりに生意気すぎると思えば、委縮してしまう。
「何をお願いしたらいいのか……」
「え~、なんでも頼んでくださいよ~」
男は、実花の態度に、お預けをされた犬のように体を揺らす。
そしてふと思い出したように、声を発した。
「あ、皿洗い!」
「へ?」
「さっき、シンクに溜まってるのが見えたんで」
それを聞き、実花は思い出す。
一週間分の汚れた食器類は、シンクの上に置かれたままだ。それを見られたのだと気づき、思わず、「あの、いつもってわけじゃないんです……は、恥ずかしい」と言い訳を口にしては、体を小さくさせてしまう。
「恥ずかしがることないですよ。俺、奴隷なんで、どんな実花さんでも、受け入れますから」
男はそういうとヘラリと微笑む。本心からそういっているように、彼女には思えたため、さらに頬が熱くなった。
「さてと。スポンジはこれで、布きんはこれ。食器を仕舞うのは、あの棚でいいですよね」
「あ、そうです。でも、本当に……」
男が、テキパキと台所事情を確認する中、実花は、盛大に汚れた皿を再確認し、やはり申し訳ない気持ちでいる。
「速攻でやっちゃいますから、実花さんは、休んでてください」
彼は、実花の背中を押して、リビングへと押し戻す。
本当にこのまま、お願いしていいのだろうかとも思うのだが、そういえば、お金はすでに払っているのだったと思い出し、大人しく待つことにした。
「ふーんふんふーん」
しばらくすると、聞こえてくるのは、軽やかな鼻歌。CMソングになっている若手歌手の歌だ。時たま、歌詞も聞こえるのだが、ほとんどはハミングであるため、その歌に、彼が詳しいというわけではないのだろう。
けれど、なんだろう。
実花は、自身の胸元を抑える。
そういえば、この家に引っ越してから、誰かを招き入れたのは、初めてだった。
だからだろうか、緊張というよりも、誰かがいるということへの安心感のようなものが生まれる。
「実花さん、終わりました~」
一時間もしないうちに、男はそういうと、自身のハンカチで手のひらを拭いながら、リビングへと顔を出した。再度、確認する。やっぱりイケメンだ。
そして、ふと、彼の骨ばった男らしい手の甲を見て、実花は思い出したように、テレビ下のキャビネットからあるものを取り出した。
「ハンドクリーム、使いますか?」
「え、いいんですか?」
「いつも、私、荒れちゃうから」
普段、皿洗いを終わらせた後は、必ず、塗るようにしている金木犀の香りのハンドクリームだ。
自分の洗い物のせいで、彼の手が荒れてしまうのは、さすがに悪いと考えたのだ。
「じゃあ、今回、俺が皿洗い出来てよかった! 一回分だけど、実花さんの手荒れ防止が出来たってことだし!」
男は、ニコニコと例の爽やかな笑顔を浮かべる。まるで室内に、風が吹くようなそれだ。
「じゃあ、お借りしますね」
クリームを受け取り、男が鼻歌交じりに、その蓋を開けた時だ。ふと、思い出したように告げる。
「あ、皿洗いのご褒美に、実花さんが塗ってくれますか?」
「え、え!? ぬ、塗るって?」
男の思いがけない台詞に、実花はそのまま言葉を聞き返すようにする。
「もちろん、俺に。あ、キモいかなぁ、奴隷の俺がそんなこと言うの」
「い、いや、キモくはない、ですけど」
実花は思わず、本音を漏らす。キモくはないのだ、不思議と。
「そしたら、ね?」
男はそういうと、実花の手のひらを優しくとった。その平に、クリームを少量垂らして、強請るように上目遣いをする。
「こ、こうですか?」
「そうそう」
実花が両の手のひらで、男の手を包むようにすれば、彼は、嬉しそうに微笑む。
節の大きな指の関節や、少しささくれ立った爪先、そして、手のひらについた、いくつかの小さな豆。
その上にクリームを塗りこんでいけば、指が指の間に絡まって、ほどけて、また触れて。そうすると、彼の体の奥に触れているような気がして、内側から、ゾクゾクとしたものが生まれてくる。
心臓の音が速い。そう思って、視線を少し上へと上げる。
すると、男と目があい、ますます、音が速くなるように感じた。
初対面の人相手に一体、なにをやっているんだろう……とも思うが、まさか、昨日の酒がまだ体に残っている? なんて考えてしまう。
「ありがとうございました!」
クリームを塗り終わり、しっとりとした潤いを取り戻した男の手。
それにあれだけ触れていたのだと思うと、何か、心臓が、ドキンと跳ねた心地がした。
そして、彼がううーんっと、手のひらを上へとあげ、伸びをした時、実花はふと、彼の体の違和感に気づく。
「なんですか、そのマーク?」
入れ墨のように、体に入っている、いや浮き出ているように見える、模様。彼の腰の辺り見えたのだ。
文字が入っているようにも、単なる絵のようにも思える。彼の健康的で、どこまでもまっさらな体には、不釣り合いなものに思えた。
「あ、これ? うわ、いつの間にか出ちゃったんだ」
男はそういうと、恥ずかしそうに、服を顎の下まで捲り上げた。
綺麗に割れた腹筋が、姿を現す。そして、腰骨の上に描かれた模様もはっきりと。
何かその様子に、色気のようなものを感じ、頬を染めてしまえば、男は気づいたようで、うっとりと瞳を溶かした。
「これ、実は魔法がかかってるんです」
「え、まほう?」
「はい。だから、もっと、よく見ません?」
さきほどまでの、彼の爽やかさからは想像もできないような、含みのある艶っぽい声。
実花の返事を待たずして、彼は、トップスを脱ぎ去った。
すると、実花の目に入ったのは、その腹筋だけではなく、盛り上がった二の腕だ。腹筋よりも、かなり存在感があるそれである。
「す、すごい、体」
「鍛えてるんで。目指せ、チョモランマ? みたいな?」
男は、照れくさそうに力こぶを作っては微笑む。
そして、すり寄るように、実花へ体を近づけた。
「ねぇ、実花さん、する?」
そして、まるで二人だけのナイショ話をするように、男は小さな声で、そんな言葉を囁いた。
「……俺、実花さんなら、もちろんいいですよ」
「え、なに、を?」
「あれ? 聞いてない? ℃0サービスは、ちょっとえっちなサービスも、もちろんやりますよ。お客様のそういうお世話も、俺らの仕事なんで」
男は自身の唇に人差し指を当てて、そういう。
実花は、それに驚いた。
彼はやはり、爽やかな好青年に見える。そんな男から、そんな言葉が発せられたことに驚いたのだ。
「そ、そんなの、だ、だめですよっ、も、もっと体を大事にしてください!」
実花は、男にそう告げる。まるで年下にする説教の様だ。
「実花さんが、そういうなら、もちろん、従いますよ。でも、俺は誰にでもってわけじゃないんです」
「へ?」
「この模様、スタッフはみんな入ってるんですけど、気持ちよくなれた時だけ、こうやって、浮き上がってきちゃうんです。ようするに、俺は実花さんに、気持よくされたってわけで」
「え、き、きもちよく……」
戸惑いを見せる実花に対し、男は、彼女の腕をとった。そして、その平を胸元へと当てる。
「実花さんも、こうやって触れ合うと、ドキドキして、気持よくなったりしません?」
「ッ、」
この心音は、どちらのものだろうか。
確かに速いそれを聞いていると、そして、熱い肌に触れていると、何かふつふつと心地よい。
「クリーム塗ってくれた時みたいに、触ってみて?」
男は、まるで実花を誘導するように、そう囁く。
それを拒否することも出来ず、実花は、ゆっくりと手を動かした。
盛り上がった筋肉の感触は、意外に柔らかい。けれど、自分の肌とは違い、たくましさも感じるそれだ。
触れて、撫でて、そうしていくと、熱が発生し、じんわりと汗をかいてくる。
それは、彼も同じなのだろうか。
そう思い、視線をこっそりと上へと上げた。
見れば、彼は、息を浅く吐き、火照った頬をしている。さきほどのような、さわやかな笑みを浮かべているだろうと考えていた実花にとって、それは意外だ。
意外だからこそ、また心臓が音を立てた。
実花がこちらを盗み見ていることに気づいた男は、ニっと口角を上げて見せる。
「すごい、きもちいい。もっとして」
「っ……」
あまりに素直で、甘えるような台詞。
そんなものを、他人から。その上、年上に見える男性から聞かされることは、初めてだった。
手を動かせば、男が身をよじり、そして、床へと転がる。まるで犬か猫のようだ。両手を広げ、ただただ、与えられるものを待っている。
実花は、そんな男の姿に、だんだんと思考を奪われるような思いとなる。
男の体を跨ぎ、そしてその胸元へと触れた。
「ッ、んっ、」
すると男は、甘い声を上げるのだ。
手のひらを、わずかに動かしただけで。
そう思うと、彼の体すべてを、この手が操作しているような気持になってくる。
「……こっちも、だめ?」
そんな彼女の心情の変化に気づいたのだろう。
頬を赤らめた男は、そういうと、ベルトを外し、ズボンのチャックを下へと下ろした。青のボクサーパンツだ。その中心が盛り上がっている。
「ね、実花さん、」
男は、甘く艶っぽく彼女の名前を呼んだ。
そして、その両足で実花の腰を掴み、引き寄せる。
彼が求めるここに、触れたらどうなるのか。
そう考えるよりも早く、彼女の指先は、下へと降りて行った。下着の上から触れたそれ。重量があり、熱い。
「ん、ん……」
触れる度に、腹のマークの色は濃くなっていくようだ。
男は、腕を上へと伸ばし、その刺激に身を揺らした。
相当気持ちいのだろうか。
表情はトロリと蕩けて、目の焦点はあっていない。それでも、その瞳は、実花の方を見つめていた。
「ね、実花さん、俺がイっていい時、言ってください」
「へ?」
「お許しをちょうだい?」
実花を抱き寄せるように、自身の口元を彼女の耳元へと近づけ、そう囁いた男。
ドキドキと、また心臓が速い。自分がそれを許可してしまった時、いったい彼はどうなるのか。知りたい、見たい。
「ど、どうぞ」
「んっ、」
男は、一層甘い吐息を吐き、そして、どうやら達したようだ。
実花は、触れていたその部分に、じんわりと染み出していく液体の存在に気づく。
「ほら、上手にいけた?」
いたずらっぽく、微笑む彼。色が変わってしまっている下着の前部分を、隠そうともせず、むしろ内ももを左右へと開いて見せた。
同時に、彼の腰の模様は、だんだんと薄くなり、消えていく。
そこで、実花は、ふっと正気に戻るような思いとなる。
「わ、わたし……」
いったい、何をしていたんだろう。
付き合ってもいない男の人相手に、こんなこと絶対にダメだ。
けれど、男は、そんな彼女の心境に気づいているというように、また、あの風を感じさせるような、さわやかな笑みを浮かべた。
「実花さんが、いいと思うこと、俺に、なんでもしていいんですよ。実花さんの望むこと、俺も、なんでもしますから」
「そ、そんなの……」
いくらそれが、彼の仕事だからと言って、こんなこと異常だ。きっといけないことだ。
そうは思うのに。
「だから、たくさん教えて。奴隷の俺を躾けて?」
そんなにも、幸せそうに微笑まれてしまえば、まるでこちらが何か親切を働いたような気持ちにすらなってしまう。
実花がそれに、返答も出来ず、ただ、モジモジとしていると、男はようやく体を持ち上げた。
「それで、最後までしなくて平気?」
「最後までって……」
「どっちでもいけるんですよ、俺」
「どっちでも?」
彼の含みのあるような問いの真意に、実花は気づくことが出来ず、オウム返しを繰り返す。
「うーん、だからさ、実花さんは、こっちの才能あると思うんですよね」
そういって、指先を取られ、向かった先は、彼の後ろの、
「うわ、えっ」
実花は、触れたその場所に驚き、体を跳ねさせた。何か吸い付くような感触を、指の腹に感じたのだ。あそこはだって、ただの出口なはずなのに。
「あ、今夜は、お預け? でも、そういうのも好きなので、もちろんオーケーです!」
男は、またあの爽快を感じさせる笑顔を見せ、持ってきたリュックから、下着を取り出した。
「ちょっとトイレ借りますね~」
そういう彼は、濡れてしまった下着を取り換えるつもりなのだろう。
というより、あの下着、わざわざ、持ち歩いているということは、確信犯なんじゃないだろうか? と実花は、ようやく気付く。
「さてと、じゃあ、今日はあがりますね!」
着替え終えた男は、そのまま玄関先へと向かい、リビングで、未だ困惑している、実花へと声をかける。
その音が、先ほどの行為を忘れたかのような、小ざっぱりしたものであったため、実花は驚き、慌てて彼の方へと向かった。
「え、か、帰るんですか?」
「はい。今日のところは」
男はそういうと、玄関で自身のスニーカーを履いていく。ロゴの入ったそれは、スポーツ好きの男性に人気のブランドものだ。
紐を結び、そして、またくるりと実花へと向き直った。
「あとこれ、俺の名刺と、メッセージアプリのID書いてあるんで。なんかあれば、こっちのほうに連絡くださいね」
男はそういうと、黒の革財布から、一枚の名刺を取り出した。彼の指先は、それに描かれた、手書きの英字の羅列を指さしている。が、実花はそれよりも、印字されたカタカナ二文字に目を奪われていた。
「シン、さん?」
「あれ、俺、名前言わなかったですか? そういうとこあるんだよなぁ~」
それは、源氏名というやつなのだろうか。
それであっても、男の名前をまったく知らなかったことに、実花も驚いてしまう。
名前も知らない人と、あんなこと……。
さきほどのことを思い出しては、脳みそが湯だってしまいそうだ。後悔、恥ずかしさ、そんなものすべてが熱となって襲ってくる。
「ねぇ、実花さん」
「は、はい?」
「俺みたいな奴隷でも、また、会いに来ていいですか」
そう、甘えたような笑顔を見せる男。
その表情に、思考はシャットダウンしてしまい、頬が染まっていく。
「えと、は、い」
「やった!」
思わず、告げてしまった言葉。
けれど、男は、満面の笑みを浮かべ、両手を握りしめては、天井に向かって突き出すのだ。
その表情は、キラキラと、とても幸せそうに見えた。
つづく
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