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わたしはナツメ――今は「兄さん」と呼んでいるけれど――に痛みを引き受けてもらいながら、日々を過ごし、いつしか大人になっていた。
頭が割れそうだ。いや、割れて中から何かが生えてきて雄叫びをあげそうだ。今までに負ったどんな怪我のときよりも痛い。痛い、痛い、痛い……。
兄さん。
兄さんに手を握ってもらえば、この痛みから解放される。けれどその代わりに兄さんがこんなふうに苦しむことになるんだ。ああでもそんなこともうどうでもいい。兄さん、兄さん、兄さんを探さなきゃ。早くこの痛みから解放されたい。
わたしは両手で頭を押さえつけながら――そんなことをしてもなんの意味もないのだけれど――兄さんを探した。
リビング、いない。キッチン、いない。ベランダ、いない。バスルーム、いない。いない、いない、いない……!
意識が飛ぶんじゃないかと思った。むしろ飛んでほしかった。そしてやっと兄さんの部屋の前までたどり着いた。
扉を思い切り開けた。ベッドに横たわっていた兄さんが体を起こし、こちらに顔を向ける。
「兄さん、助けて!」
「悪いけど、今はそんな気分じゃないんだ……」
暗く沈んだ声。
「なんで、ねえ、痛いの、痛い……」
「それはお前の痛みだ。お前が自分で感じるべきものなんだ」
なんでそんなこと言うの。と、もう口に出す余裕すらなく、ベッドへ走り寄り、無理矢理に兄さんの手を掴んだ。
すーっと痛みが引いて安堵したのも束の間、まるでぎゅっと心を握りつぶされているような、そんな悲しみが胸の内を満たす。
何これ。こんな悲しみ、知らない。
兄さんは顔を歪めて額に片手を添えていた。
「これはまたすごい頭痛だなあ」
兄さんは歪む顔をさらに歪めて微笑みながら、そう言った。
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