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「いいの? 元に戻ったらおじさん、さっきみたいにまたあの男たちに会ったら……」 「何かされたら警察を呼ぶさ。うちに来たあの警察官なら信頼出来そうだし。心配してくれてありがとう」 「んー、わかったよ。おじさんがイイなら。じゃあ目をつぶって向こう向いてくれる? ホントなら寝ているときがいいんだけど、ここじゃそれも出来ないし、寝たふりってことで」  そう言って子どもは小さくなって呪文のようなひとりごとをブツブツと唱え始める。榊原は言われたとおり子どもに背を向けた。  するとヒュンヒュンと小さな風が頬にいくつも当たり、榊原の脳裏に今日一日の記憶が鮮明に蘇った。 「目を開けていいよ」  目を開けると、両手で目や口、自分の鼻の配置を何度も触ってじっくり確認した。今度こそ戻ったと、スマホの鏡で自分の顔をしばらく眺める。安心して泣きそうになり、髪をクシャクシャっと掻きながら後ろを振り返るとーー。  ニャー。 「あれはーー」  黒猫がシッポを振って草むらに消えた。           了
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