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「あっ、いえ。そのぉ。息子から聞いていましたので。日頃お世話になっている、吉川さんっていう優しい人がお隣にいるって。時々美味しい煮物を作って持ってきてくれるんだって、感謝してました。それで見た感じ、この人かなと勝手に思いまして。違いました?」  随分と脚色したなぁと腹の中で笑いつつ、榊原は向けられている視線を交わすために吉川を褒めちぎる。 「あら。榊原さん、そんなふうに言ってるの? お隣だし、助け合うのはごく普通のことよ〜。ねぇ、おまわりさん? うふふ」 「それで、息子さんは今どこに?」 「買い物行くって言って、駅の方に向かいました」 「そうですか。まぁそれでしたら、大丈夫そうですね。すみません、お邪魔しました」 「いえ。ご苦労様です」  これだけ光っていたら、父親以外に見られないだろう。吉川は同年代と心を許したのか、父親に扮した榊原に艶っぽい会釈を残してドアを閉めた。
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